ブータンで初めて小児二次救命処置の研修が実施されました

2024年2月15日~17日、ブータンで初めての小児二次救命処置の研修が開催されました。

JICAでは、ブータンにおける医学教育の質の強化の一環として、現地ニーズのあったシミュレーション教育の導入を進めています。本プロジェクトにおいて、これまでJICAからシミュレーション機材等の供与を行うとともに、シミュレーション教育にかかる人材育成を進めてきました。2024年1月にブータンの医師・看護師6名を日本に招き、主に小児と成人の救急医療分野におけるシミュレーション教育について研修を行いました。今回は、訪日研修を終えた小児科医及び看護師が中心となり、ブータン国内の医療スタッフに対する小児二次救命処置の研修が初めて開催されました。

心停止を含めた緊急時の対応は、国を問わず医療者にとって必須の技能ですが、実際に患者が急変したときの経験だけから学ぶことは困難です。シミュレーション教育はそのようなケースに非常に有効で、マネキン人形を実際の患者に見立て、「もし患者がこのような緊急事態となった場合にどう対応していくか」というシナリオを作り、安全に繰り返し訓練することができます。日本をはじめ多くの国では、自国のシミュレーション研修プログラムを作り医療者の教育を行っていますが、ブータンには小児患者を対象にしたそのような研修プログラムは存在しませんでした。

ブータン王⽴医科⼤学 (Khesar Gyalpo University of Medical Sciences of Bhutan: KGUMSB)ではDruk Sokchop Coursesと呼ばれる心肺蘇生等に関する研修コースの開発を進めてきました。同研修コースは、ブータンオリジナルのものとして開発され、一次救命処置や小児二次救命処置などが含まれています。

今回は、訪日研修で指導に関わった日本の小児集中治療の専門家も訪問し、研修の実施を支援しました。まず2月15日~2月16日に、ブータン国内の小児科・救急科の医師・看護師計17名が各地から集まり、小児二次救命処置研修が開催されました。参加者からは、「これまでこのような研修を受けたことがなく、これから小児科医として一人で地方病院に派遣される前に学ぶことができて自信になった。すべての若手医師が受けられるように広げていきたい。」(若手小児科医)といった感想が聞かれ、ブータンでの小児医療水準の向上に寄与することが期待されました。
2月17日には、小児二次救命処置研修の参加者のうち、研修指導に意欲的な6名を対象に小児二次救命処置研修の指導者養成コースも開催されました。これによって、研修を開催し指導することができる人材を一人でも多く養成し、国内各地で定期的に小児二次救命処置研修が開催される体制を目指すことが可能となります。

今回の研修開催を主導した現地スタッフからは、「訪日研修で自分たちが体験したような研修が実現できるか自信がなかったが、日本人専門家のバックアップのもとで実際に開催してみて、自信になった。引続き継続して開催していきたい」といった感想が聞かれました。

今後も引続き、小児二次救命処置研修の継続開催だけでなく、ほかのシミュレーション研修の開発・実現に向けて支援を継続していきたいと思います。

ブータン 医学教育の質の強化プロジェクト
短期専門家 井上信明・堀米顕久

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研修開始前に現地指導者と日本人専門家で事前打ち合わせ

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小児二次救命処置の研修中の様子

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日本人専門家から参加者に対してシナリオのフィードバック