JICA招へい事業:日本における保健医療サービスの質と基準の維持・向上に関する取り組みについて

GLO+UHCプロジェクトは「日本における保健医療サービスの質と基準の維持・向上に関する取り組みについて」と題した招へい事業を2023年5月15日~18日に実施しました。タイ王国国家医療保障機構(NHSO: National Health Security Office)・質及び基準管理役員会(QSCB: Quality and Standard Control Board)役員等、計20名を招へいしました。

タイ王国では、保健医療分野において中央政府から地方政府への権限の移管が実施されており、移管に伴い、保健医療サービスの質と基準の維持・向上を図ることが課題の一つとして挙げられています。このような背景から、日本における保健医療サービスの維持・向上に関する制度の設計、運用、モニタリング等に関する経験の共有と保健医療制度運営に係る中央政府・地方自治体・医療機関との連携等について学ぶことを主な目的として、招へい事業を実施しました。

1日目は日本医療機能評価機構を訪問し、厚生労働省より医療安全に関する厚生労働施策についてご講演をいただき、続いて日本医療機能評価機構が実施している病院機能評価について学びました。タイ側からは、NHSO副長官よりタイの地域保健システムについて講演を行い、保健医療システムの向上について、日タイ間で経験共有を行いました。

2日目は日本医療機構評価機構において、厚生労働省より医療の質向上に関する厚生労働施策についてご講演いただくとともに、日本医療機能評価機構より、医療の質向上のための体制整備事業、医療事故情報収集等事業、産科医療補償制度についてご講演いただきました。さらに、日本医療安全調査機構より医療事故調査・支援センターについてご講演いただき、厚生労働省の施策のもと、日本医療機能評価機構、日本医療安全調査機構等の関係機関が協力しながら保健医療サービスの維持・向上に取り組んでいることについて学びました。タイ側からは、NHSOが運営している医療補償制度について講演を行いました。NHSOの医療補償制度は日本の産科医療補償制度と異なり、医療機関で提供が認められている医療サービス全てを対象としており、日本側の関心を集めました。

3日目は、JICA横浜センターにて神奈川県庁より講師をお招きし、神奈川県における医療の質及び医療安全の向上に関する取り組み、医療安全支援センターの実際についてご講演をいただきました。国の政策をもとに、地方自治体の医療機関や住民に対する制度運用の実情について学ぶことができました。また神奈川県では地方独立行政法人を設立し県立病院の運営を行っていますが、この点についてもタイ側は医療機関の運営手法の一つとして興味深く学ぶことができました。午後は、神奈川県立がんセンターを訪問し、センター内における医療の質向上及び医療安全の取り組みについて学びました。施設見学を行うとともに、実際にセンターの感染制御推進会議に参加しました。複数の部門から多職種の職員が出席し、効率的に医療安全向上に関する会議を進めている様子を見学することができました。

最終日はJICA本部にて、厚生労働省より医療の質及び医療安全の向上に関する診療報酬施策についてご講演をいただきました。その後、代表団はラップアップセッションを行い、日本の保健医療サービスの質と基準の維持・向上に関する取り組みに関する経験と教訓をまとめ、タイの保健医療システムにどのように活かしていくか、について活発な議論を行いました。

改めまして、本研修にご協力いただいたすべての皆さまに心より感謝申し上げます。

GLO+UHCプロジェクトは引き続き日タイのグローバルヘルスとユニバーサルヘルスカバレッジに関するパートナーシップを強化するとともに、2030年までのUHC達成に向けて周辺国支援等に関して微力ながら尽力して参ります。

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