医療情報システムの共同研究に係る日タイの相互訪問 - タイ人研究者及び行政官の日本訪問 - の開催

医療情報システム（Health Information System）は、保健医療制度を構成する重要な要素の一つです。GLO+UHCプロジェクトはPhase1から、医療情報システムに関する研究促進基盤の整備、若手研究者・行政官の能力開発、日タイ間の関係強化のための活動を、国際医療研究センター・グローバルヘルス政策研究センター(iGHP)の協力のもと実施しています。
* 2018年に国立国際医療研究センターとタイ王国国家医療保障機構との間で日タイ共同研究に関する包括研究協定（Memorandum of Understanding）が締結されました。Phase1の成果により、すでに３本の国際共同研究論文が国際ジャーナルに出版されています。

Phase2では、以下の2つの疾患に関するタイの医療費請求データを用いて、日タイの研究者による共同研究を推進しています。

今般、日タイ相互訪問の一環として、1) 現在進行中の共同研究について意見交換を行うこと、2) 日本における保健医療データに関する施策の理解を深めること、3)今後のさらなる両国間の関係強化を図ること、等を目的にタイ人研究者及び行政官がiGHPを訪問しました。

本訪問には、タイからはPrince of Songkla University (PSU)所属の３名の研究者とタイ王国国家医療保障機構（NHSO）の２名の行政官が参加しました。

１日目の午前は、iGHPの研究ミーティングに参加し、iGHPで研究中の研究内容について説明がありました。午後は、iGHPで実施されている国際共同研究の実際、COVID-19関連の研究、国際保健外交に関する人材強化プログラムについて、より詳しい説明があり意見交換がなされました。その後、国立国際医療研究センター理事長表敬が行われ、タイ側からは、Phase1から続くNHSOと国立医療研究センターとの研究協力関係に謝辞が述べられ、これまでの研究成果の報告と今後の展望について報告及び意見交換がなされました。理事長からは研究協力関係が深化し、さらなる成果が出されることへの期待が述べられました。

２日目の午前は、日タイの共同研究の２テーマに関わる研究者らからそれぞれの研究の現状と課題等について共有がなされ、今後の論文執筆及び投稿に向けて活発な議論がなされました。午後は厚生労働省保険局保険データ企画室より「ナショナルデータベース（NDB）の紹介」と題して日本のデータヘルスの取り組み、特にNDBに関する施策についてご講演を頂きました。講演はハイブリッド形式で実施し、タイ国内からもオンラインでNHSO職員が多数参加し、活発な質疑が行われ、タイにおける行政データを用いた医療政策の立案に資するプログラムになりました。

３日目の午前は、前日に行われた研究会議を踏まえて、各研究者が実際にデータ等の分析や考察等を行いました。午後は、慶應大学を訪問し医療政策・医療管理に係る取り組みについてご紹介いただき意見交換を行いました。

４日目の午前は、前日に引き続き、共同研究のテーマに沿って各研究者同士による意見交換が行われ、データ解析や論文執筆等に取り組みました。午後は、NDBを活用した研究基盤の整備をテーマにiGHPからご講演があり、タイ側参加者は、NDBを活用した医療の質の分析の実際やそれらのエビデンスが国の審議会等の議論で使われている様子を確認することができました。

最終日は、1〜4日目まで学んだことをラップアップセッションとして総括した上で、各研究テーマの進展と今後の論文執筆に向けた具体的な計画について議論がなされ、４本の論文を執筆する計画について再確認がなされました。

５日間の訪問を通して、タイ人研究者及び行政官らは、研究推進のための活発な議論を日本人研究者らと行うとともに、厚生労働省におけるデータヘルスの取り組み、NDBを用いた研究の実際や研究成果の行政への還元について学ぶことができました。今回の日本訪問で得られた知見・経験により、タイにおける医療情報システムのさらなる発展につながることが期待されます。

改めまして、本訪問にご協力いただいたすべての皆さまに心より感謝申し上げます。GLO+UHCプロジェクトは引き続き日タイのグローバルヘルスとユニバーサルヘルスカバレッジに関するパートナーシップを強化するとともに、2030年までのUHC達成に向けて周辺国支援等に関して微力ながら尽力して参ります。