第三国研修の実施

2023年4月3日から7日までの5日間、カンボジアのプノンペン水道公社（PPWSA：Phnom Penh Water Supply Authority）にて第三国研修を実施しました。ディリの水道の現状は、プノンペンの1990年代前半の水道にほぼ近い状況にあります（下表参照）。
プノンペン水道公社が1993年に改革を開始し、1997年には公社化を実現させ、いかに現在の名声を得るまでに至ったか。また現在も継続するPPWSAの改善の取り組みについて学ぶことは、東ティモール水道公社（BTL：Bee Timor-Leste）の職員にとって非常に有益な機会となりました。
研修の主なテーマは、PPWSAでのビジネスプラン、人材育成、財務管理、顧客サービス業務、顧客メーター管理、配水管理と無収水削減、浄水場の維持管理、水質管理などでした。各業務の第一線で活躍するPPWSAの中心的なスタッフによる講義に加え、PPWSAの初代総裁であるエクソンチャン　カンボジア王国首相付大臣からも水道事業体の改革とリーダーシップについて講義をしていただきました。

PPWSAの職員による講義は教科書からの知識の説明ではなく、全て経験に基づく内容のため、全てが実務的で説得力がありました。東ティモールからの参加者は、現在、自分達が直面している課題をいかに解決すべきか、PPWSAが90年代に経験した困難をどう解決してきたか、PPWSAの課題への取り組みをいかに自分達の業務に活用できるかを考えなら受講していたため、講義中は非常に多くの質問が出され、活発な意見交換が行われました。

プノンペンでは、1993年以降「第1次上水道整備マスタープラン（2010年目標）」「第2次上水道整備マスタープラン（2020年目標）」「第3次上水道整備マスタープラン（2030年目標）」と常にマスタープランに基づき事業改革と水道の拡張・整備が行われています。また、マスタープランを活用して開発パートナーからの支援を調整し、必要な資金協力を獲得しながら、水道施設の拡張・整備が進められています。他方、BTLからの参加者の中には、どちらかといえばプロジェクト実施のためにマスタープランが策定されていると考えていた職員もおり、改めてディリの中・長期的開発計画に基づいた水需要予測と施設整備の重要性、マスタープランの重要性を感じた参加者もいた様子でした。

また、PPWSAでは、あらゆる業務について、標準作業手順書（SOP：Standard Operating Procedures）を策定することにより、業務の水準、スタッフの質が確保されています。課題を課題のまま放置せず、可能な限り早期に解決へ向けて取り組み、更に新しい取り組みはSOPに反映し、毎年SOPを更新する仕組みもBTLからの参加者にとっては重要な学びとなりました。また、目標達成に向けたチームワークや職員の動機付けの重要性などについてもPPWSAの取り組みから学んだ様子でした。

現場視察では、全ての部署のオフィス、浄水場において5S KAIZENの取り組みが行われていることも非常に印象的だったようで、このことについて活発に意見交換が行われました。
BTLからの参加者は、東ティモールに帰国後、PPWSAで見たことや学んだことを一つでも多く業務に取り入れるべく実践しており、今回の研修は非常に有益な機会となりました。
PPWSAが東ティモールからの研修員を受け入れるのは、2014年に続き今回が2回目となりますが、同じ水道事業者として、協力しながら発展していきましょうという絆と、引き続きの交流をあらためて確認する機会ともなりました。

今回のプノンペンでの研修は、BTLの各部署の部長または課長レベルの管理職5名を対象とした研修でした。
プロジェクトでは、他にも2023年2月に電気・機械技術者10名、土木技術者10名を対象に、ジャカルタの水道環境衛生訓練センターでの第三国研修を実施しております。

表．BTLの現在の業務指標とPPWSAの30年間の業務指標の変化