About Machine Translation

This site uses machine translation. Please note that it may not always be accurate and may differ from the original Japanese text.
This website uses a generative AI

SATREPSプロジェクトの活動紹介

日本の裏側にある国、ペルー。ペルーと聞いて、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。
マチュピチュ?フジモリ元大統領?2024年にペルーで開催されたAPECでしょうか。

ペルーの国土は日本の約3倍、海岸沿いの砂漠地域(コスタ)から標高4000m越えのアンデスの山岳地域(シエラ)、そしてアマゾンの森林地域(セルバ)と、多様な自然環境を持つ国でもあります。特に、アンデス~アマゾン地域の自然環境は、4000m越えの高山植物がみられる地域もあれば、アマゾンの熱帯林がみられる地域もあり、世界的にもユニークな環境だといえるでしょう。つまり、昨今話題の気候変動対策や森林保全といったキーワードがぴったり当てはまる国でもあるのです。

JICAでは、そのアンデス~アマゾン地域を対象として、山地森林生態系保全を目指し、森林管理システムを構築するプロジェクトを実施しています。その名も「アンデス-アマゾンにおける山地森林生態系保全のための統合型森林管理システムモデルの構築プロジェクト」。このプロジェクトは、SATREPSという、地球規模課題解決に向けて日本と開発途上国の共同研究を推進するプログラムで実施されており、日本側は国立の研究機関である森林総合研究所が、ペルー側は農業開発灌漑省森林野生動物庁(SERFOR)とラ・モリーナ国立農科大学が中心となって実施しています。

今回、現地調査に同行しましたので以下ご紹介させていただきます。

今回訪問したのは、マチュピチュで有名なクスコ州にあるケブラダ・オンダという小さな町です。気候帯でいうと、シエラとセルバの中間といったところでしょうか。首都のリマからは飛行機でクスコまで1時間半ほど、そこから車に揺られること6時間。。。ケブラダ・オンダ自体は標高1000mちょっとと、そこまで高くはないのですが、クスコの空港は標高3300m、車での移動中には一時4500mを超えるなど、かなりハードな移動でした。ただ、標高4000m近い場所ではアルパカを見ることができました。初の生アルパカ、かわいい。。。

【画像】

今回同行した調査は、森林火災や農地利用によって劣化してしまった森林(森林としては存在するものの、構造、樹種の組成、機能が原生林と比べて低下している森林)を把握、評価する調査です。森林総研の宮本和樹研究員の調査に同行させていただきました。

ケブラダ・オンダから未舗装の山道を車で進むこと40分、ここからは道なき道をマチェテと呼ばれるクワみたいな刃物で切り拓きながら進みます。調査地は、事前に衛星写真を使って森林劣化が進んでいるような箇所を特定、現場の状況を見ながら確定していきます。道なき道、しかも角度40度近い急斜面をえっちらおっちら進むこと20分、調査地を確定しました。

【画像】

この調査地では、任意の箇所に中心点を設定、そこから同心円状に半径10m、20mの円を作って調査範囲(調査プロット)を作ります。中心点はGPSを用いて正確な位置を特定しつつ、中心点から見て東西南北と北東・北西・南西・南東を計測し、中心から10m、20mの地点に目印を付けた棒を10㎝単位でセットしていきます。この半径10m、20mは、中心点と棒までの距離(斜距離)ではなく、平面の地図で見た時の距離(水平距離)を取る必要があり、急斜面で設定すると見た目の距離よりかなり遠く感じます。ここで活躍するのが、超音波で距離を測る機械。角度と距離を測ることができ、機械の中で水平距離まで計算される優れものです。また、調査プロット内にも道はないので、再度マチェテで切り拓きながら棒を設置していきます。合計16本の棒を設置するのに、3時間弱かかります。

【画像】

いよいよ調査です。調査プロット内に「どの種類の木が」「どれくらいの大きさで」「何本生えているか」を調査することで、その場所の森林がどのような状態になっているかを分析します。木の大きさを測るには、胸高直径といって大人の胸の高さ(約130cm)の直径を測ります。ここで活躍するのは、ちょっと特別な巻き尺。「円周=直径×π」であることから、長さを3.14で割ったメモリがついている巻き尺で測れば、巻き尺を木の幹に回すだけで直径が分かる、というシロモノです。これで、調査中に計算する手間が省けます。作業の効率化から、半径10mの範囲では胸高直径5cm以上、半径10m~20mのドーナツ状の範囲は胸高直径10cm以上の樹木について、胸高直径、高さ、樹種を記録していきました。

【画像】

今回のプロットでは、全体で100本程度の樹木を測定しました。お昼を挟んで6時間、斜面を駆けずり回って計測しまくりました。最後に、地元の人へ簡単な聞き取り調査を実施して終了です。それを踏まえると、今回の調査プロットは過去にコーヒー農園などの農地として使われ、今から15年ほど前に火災が発生してから人の手が入っていない再生途中の若い森林ではないか、ということでした。

【画像】

今回の調査1か所だけで何かが分かる、というわけではありません。同じような調査を多くの場所で実施し、どのような木がどんな生え方をしているかによって、その場所の森林状態をどう評価するのが適切なのかを区分していきます。そこで得られたデータを、本プロジェクトの別の研究者が実施している航空写真からの分析(リモートセンシング)のデータと照らし合わせることによって、森林劣化の程度を評価するマップを作成します。そのマップを活用して、今後の森林管理をどのように実施していくべきかを、地域住民たちに説明して実践していく、というのが今回のプロジェクトの目標なのです。

今回の調査地の近くでも、急斜面でコーヒーやパイナップルが栽培されていました。つまり、地元の人たちにとって森林は大切な生活の手段になっています。「森林保全」「生態系保全」という旗印のもと、彼らに「森林は大事なので使わないでください」と言うことは、彼らから生活手段を奪うことになります。一方、生活の手段だからとむやみやたらに伐採してしまっては、環境破壊になるだけでなく、森の保水能力が奪われて水不足になったり、土砂災害が発生してしまったりと、地元住民にも負の影響が発生してしまいます。そのような状況を避けるため、本プロジェクトでは、現在の森林の状況を適切に把握することで、保全だけでなく、適切な利活用も含めた森林管理システムを構築し、地元住民に活用してもらうことを目指しています。

今後、このプロジェクトは現地での計測だけでなく、システムの構築、地域住民への説明・活用へと進んでいきます。世界的にもユニークなペルーの自然を生かしていくべく、このプロジェクトに取り組んでいきます。