磯田珠奈子短期専門家の活動報告(2023年12月23日)

磯田珠奈子短期専門家(県立広島大学)の報告をご紹介します。

概要

2023年12月11日から22日までの期間、タイのカセサート大学でウキクサを用いた実習を実施しました。実習には約10人の学生・ポスドクが参加し、実験における積極的な質疑応答や議論を熱心に行いました。この実習を通して、タイのウキクサ研究における新しい手法を参加者に伝え、ウキクサに関する知識を深めることができたと感じています。

実習内容

1.サリチル酸添加による花成誘導の検証

タイのウキクサは自然環境下での花成報告が稀であり、また実験室環境下でも日長条件のみでは花成誘導が確認できていませんでした。サリチル酸はウキクサ植物の花成誘導を促進する化合物として知られています。本実験では、サリチル酸濃度を振った培地でウキクサを培養し、花成誘導ができるか検証しました。サリチル酸添加後2週間では花は見られませんでしたが、3週目にタイ産のSpirodela polyrhizaの花が確認できました。これは、タイの咲きにくいウキクサの花成誘導条件を調べる上で、重要な結果となりました。

2.塩耐性のあるウキクサの選抜

塩ストレス環境下でウキクサを生育させることによって、塩耐性ウキクサの選抜を目指しました。この実験では、NaCl濃度を振った培地で1週間育てた後、ウキクサの面積を測定することでどの種(株)が塩ストレスに強いかを調べました。面積測定にはImageJのマクロを使用し、写真から自動測定しました。塩耐性株の選抜は、環境ストレスに強いウキクサの開発に向けた一歩となります。今後はこの手法を応用することで、さまざまな環境ストレスに対応するウキクサ株の効率的な選抜が可能になることが期待されます。

セミナー

タイトル:Interspecific divergence of circadian properties in duckweed
ウキクサの概日時計の性質が種や属によって大きく異なり、特に低緯度地域に主に生息する種は不安定な概日リズムを示すという研究内容を、12/19開催のセミナーにて紹介しました。セミナーには約15名が参加し、様々な議論を交わすことができました。特に、タイのウキクサが低緯度地域の特有の環境に適応して概日リズム性が変化している議論は、学術的な視野を広げるものでした。

*参照:2023年12月22日:短期在外研究員(短期専門家)派遣

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