ARCHプロジェクトが「WADEM Humanitarian Award for Excellence in Disaster Management」を受賞しました!
ARCHプロジェクトは、5月2‐6日の期間で東京にて開催された第23回世界災害救急医療学会(23rd Biennial Congress of World Association for Disaster and Emergency Medicine、以降WADEM 2025 Tokyo) に参加しました。2019年に東京開催予定であった本学会は感染症の世界的蔓延で延期を余儀なくされ、2023年アイルランド・キラーニーでの開催を経て仕切り直しの実施となりました。愛子内親王殿下のご挨拶から始まった本学術会議は、過去最高の1,000名以上が参加したとの発表がありました。
日本災害医学会との共同開催である本学会は、プロジェクト終了の年に当たる10年目を迎えたARCHプロジェクトにとって、非常に意義深い学会となりました。期間中には「ARCHプロジェクトセッション」と「災害保健医療に係るASEAN学術ネットワークセッション(ASEAN Academic Network on Disaster Health Management、以降AANDHMセッション)」が設けられ、それぞれARCHプロジェクトを国際医学会にて紹介する良い機会になりました。両セッションでは、ARCHプロジェクト活動を担うカウンターパートから代表らが口演を行いました。*WADEM Programme
ARCHプロジェクトセッション
5月3日(土)14:30‐16:00(日本時間)
座長:久保達彦先生、夏川知輝先生
口演者:(発表順)
- 1 . プミン・シラプント先生(ARCHプロジェクト代表)
- 2 . 甲斐達朗先生、夏川知輝先生(ARCHプロジェクト国内支援委員代表)
- 3 . クリアンサック・ピンタタム先生(地域調整委員会事務局代表)
- 4 . ショーン・キャセイ氏(世界保健機構 西太平洋地域事務局(WPRO)代表)
本セッションでは、ARCHプロジェクト立ち上げに関わったプミン医師によるプロジェクト形成の背景や達成された活動領域、地域枠組み形成を成し遂げることが出来た成功要因などプロジェクト全体を俯瞰する口演から始まりました。それを受けて、日本とASEANの災害保健医療開発に係る連携の歴史とあらまし、ARCHプロジェクト国内支援委員の役割、災害保健医療の更なる発展において日本‐ASEANの協力体制が目指すものについて、甲斐国内支援委員長と夏川委員より発表がありました。続いて、ARCHプロジェクトにて立ち上げられASEAN Health Cluster枠組みに正式に設置された地域連携委員会(Regional Coordination Committee on Disaster Health Management(RCCDHM)事務局からクリアンサック医師が登壇し、ASEAN災害保健医療の政策や地域活動などにおける調整及び連携枠組みについて発表がありました。最後は、WHO西太平洋地域事務局よりショーン氏よりASEANの一部が管轄区域に入る西太平洋でのEMT開発の取り組みや今後の課題等について共有がありました。
プミン医師による発表
クリアンサック医師による発表
WHO WPRO ショーン氏
座長を務める夏川委員と久保委員
ARCHセッション登壇者、AIDHM、国内支援委員の皆さん
AANDHMセッション
5月5日(月)14:00‐15:30(日本時間)
座長:江川新一先生、茅野龍馬先生
口演者:(発表順)
- 1 . ヨディ・マヒンドラタ先生(ASEAN災害保健医療研究所代表、ASEANジャーナル編集長)
- 2 . マリヤミ・ユリヤナ氏(共同研究*主席研究者)*ARCHプロジェクト学術活動の一環
- 3 . フラビオ・サリオ氏(WHO EMT事務局)
- 4 . ジェフリー・フランク氏(Prehospital and Disaster Medicine:PDM*編集長 *WADEM公式ジャーナル
AANDHMセッションはAIDHMに加え、WHOやWADEMオフィシャル学術誌であるPDM編集長が登壇しました。AIDHM所長であるヨディ氏からは、ASEAN学術ネットワークの戦略と公式ジャーナルであるASEAN Journal of Disaster Health Management(AJDHM)創刊の報告を行い、ASEANの災害保健医療に関する学術研究の推進への参加を呼びかけました。同じくAIDHMを代表して登壇したマリヤミ氏からは、2023年度から開始した共同研究プログラムの枠組みと今後の課題に関する報告がありました。同盟国同士と言え異なる複数国で実施する共同研究では、広い視点を持つことができるという利点がある一方で、乗り越えるべき課題を共有しました。WHO EMT事務局から登壇したフラビオ氏は実災害対応から得る科学的論証の重要性、PDM編集長のジェフリー氏からは学術誌編集技術の哲学と人材育成におけるPDMの狙いをそれぞれ口演いただきました。
そして、最終日の閉会式では、ARCHプロジェクトが「WADEM Humanitarian Award for Excellence in Disaster Management」が授与されました。この賞は、災害緊急医療分野での発展に寄与した組織やプロジェクトなどに送られ、通常は隔年で開かれる学術会議にて発表されるようです(過去の受賞団体及びプロジェクト)。ARCHプロジェクトがASEAN地域でのより迅速で効果的な災害保健医療の提供を目指して構築した地域連携の枠組みや訓練及び学術活動プラットフォームの開発などが世界的に認められた瞬間とも言えます。プロジェクト最終年10年の節目にこの様な機会を頂いたこと、また、ARCHプロジェクトに関わり辛抱強く地域災害保健医療の開発に貢献して下さった全ての方々に敬意と感謝を表します。この先も「One ASEAN, One Response」の実現を目指したASEANと日本の連携が継続されるよう、残りのプロジェクト期間もより一層団結して取り組みたいと思います。
ヨディAIDHM所長による発表
マリヤミ氏による発表
パネルディスカッション(左から、久保国内支援委員、マリヤミ氏、ジェフリー氏、ヨディ氏、フラビオ氏、茅野学術支援委員、江川学術支援委員)
閉会式でWADEM Humanitarian Award for Excellence in Disaster Managementを受賞するARCHプロジェクト(左から、池田チーフアドバイザー、ベラ氏(AIDHM)、クリアンサック氏(RCCDHM)、ドナヒューWADEM議長)