第3回ARCHプロジェクト国別研修の開催
人的ネットワークを基盤としたASEAN災害保健医療管理の強化 ー ARCHプロジェクト国別研修の成果
2024年10月21日から11月9日にかけて、ASEAN地域の保健省・教育研究機関、医療機関から災害医療に携わる19名を日本に招き、第3回「ARCHプロジェクト国別研修」が開催されました。2022年、2023年に続き3回目となる今回の研修では、講義や演習を通じた学びに加え、参加者間の知識共有や相互学習を通じて、東南アジア諸国連合(ASEAN)が掲げる「One ASEAN, One Response」のビジョンのもと、災害保健医療管理分野における地域協力体制のさらなる強化を目指しました。
講義・施設見学
10月22日から11月1日にかけて、千里救命救急センターを会場として、日本の災害医療をはじめとする関連分野の専門家による講義が実施され、災害対応および災害保健医療管理に関連する幅広いテーマについて学びました。
さらに北大阪消防指令センターおよび研修会場でもある大阪府済生会千里病院を訪問し、日本の救急対応システムの機能や、病院の災害対応能力強化の取り組みについての理解を深めました。大阪赤十字病院では、国際赤十字・赤新月運動における災害対応の枠組みや、同院のロジスティクスセンターにおける緊急医療チームの医薬品や資機材の管理システムについて学びました。
また、「人と防災未来センター」では、1995年の阪神・淡路大震災の実態を展示や映像を通じて学び、災害対応・復興の過程や防災・減災の重要性に対する理解をさらに一層深める機会となりました。
これらの学びを通じて、参加者は理論と実践の両面から、日本の災害保健医療体制に関する包括的な理解を深めることができました。
経験共有セッション
2024年台風第11号(Typhoon Yagi)に関する経験共有セッションも実施されました。同台風による甚大な被害を受けたインドシナ半島のカンボジア、ラオス、タイ、ベトナム等の参加者が、自国における緊急医療チーム(Emergency Medical Team:EMT)の運用や派遣調整に関する経験を共有しました。
第21回千里メディカルラリー
11月3日には、研修員が「第21回千里メディカルラリー」に参加しました。本イベントでは、研修員が医師、看護師、救急救命士などで構成される緊急医療チームを編成し、複数のシナリオステーションを順に巡りながら、模擬傷病者への対応や処置に取り組みました。
アクションプラン発表会
本国別研修では、研修員が研修を通じて得た知識や経験を活かし、「災害保健医療管理に関するASEAN首脳宣言実施のための行動計画」において設定された国レベル目標の達成に向けたアクションプランの策定が求められます。
11月7日に開催された発表会では、各国の現状評価に基づき策定されたアクションプランが披露され、各国が直面する課題や今後の取り組みの方向性が共有されました。
今後への期待
本研修を通じて得られた知識や経験に加え、参加を通じて構築・強化された研修員同士の人的ネットワークは、今後、ASEAN地域における災害医療の連携体制をさらに強化していくうえで、重要な資産となることが期待されています。
第3回災害保健医療管理に関するARCHプロジェクト国別研修参加者
大阪府済生会千里病院千里救命救急センターでの講義に参加する研修員
研修員はグループディスカッションや実践的な演習を通じて、講師や他の研修員と密接に議論を交わし、互いの経験を共有しました。
カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム等からの研修員が、2024年台風第11号(Typhoon Yagi)への対応に関する経験共有セッションで、緊急医療チーム(EMT)の派遣調整に関する経験を共有しました。
北大阪消防指令センターでの現地視察を通じて、研修員は日本の救急医療体制について理解を深めました。
大阪府済生会千里病院での現地視察を通じて、研修員は病院の災害管理の実践について学びました。
大阪赤十字病院を訪問し、国際赤十字・赤新月運動における災害管理の枠組み、緊急医療チームの医薬品、資機材管理についての理解を深めました。
人と防災未来センターでは、過去の災害経験から得られた教訓や復興の取り組みについて学びました。
第21回千里メディカルラリーに参加し、ASEANチームとして模擬患者の対応に取り組み、それぞれの技能を遺憾なく発揮しました。
ARCHプロジェクト国別研修に参加した研修員が、ASEAN各国それぞれのアクションプランを発表しました。
研修員はJICA関西センターにて第3回国別研修の閉講式に出席し、本研修の成功を祝いました。