第6回Regional Collaboration Drill開催!(前編):タイでの大規模洪水を想定した受援と災害緊急医療体制の確認とASEAN各国連携を演習する大規模訓練
2025年2月9‐13日、ARCHプロジェクト期間内最終となる第6回Regional Collaboration Drill(RCD)が開催されました。本レポートは、訓練開始前準備から訓練1日目までをまとめた前編となります。
第6回目となる本RCDはARCHプロジェクトが約10年を費やして開発を継続してきたASEANの災害医療協力連携のいわば集大成とも言えます。その節目となるRCDのホストはARCHプロジェクトのリード国でもあるタイがホストを引き受けてくれました。タイから始まったこの地域演習開発。タイは2011年にバンコクと隣県を巻き込む大規模洪水に見舞われ、約800名の死者と2万世帯が被災し、455億ドルもの経済損失をもたらし、近代史上最も被害の大きな災害として記憶に強く刻まれています(*引用)。この経験をもとに今回の演習を利用し、タイ保健省(Division of Public Health Emergency Management:DPHEM)と共同開催機関の国家救急医療機関(National Institute for Emergency Medicine:NIEM)(*以降タイチーム)を中心に、タイの受援や国内災害対応手順の再確認を目的としてシナリオ作成から各連携機関との調整など準備を進めてきました。
過去のRCD開催履歴
■ RCDの目的
1) 大規模災害や複合的な人道支援ニーズに対する国際援助の受援メカニズムを確認する
2) 災害対応におけるデータ管理や分析及びASEAN EMT SOP(ASEAN緊急医療チーム標準手順書)で定められた必要書類などを含む報告能力を測る
3) 共同演習を通して、医療・保健分野とそれ以外の関連機関との連携の向上を図る
4) 効果的な域内連携ためのAHAセンターの調整メカニズムとASEAN首脳宣言を実施するための行動計画(Plan of Action)を強化する
5) ARCHプロジェクトが開発してきた成果物の最終化に寄与する(Comprehensive Team Information(CTI)、調整コース(Coordination course)カリキュラム、メンター報告書、RCD準備ガイドブックなど)
RCD本番に向け、タイチームは以下の準備を実施しました:
1) 7月17日 第1回RCD開催のための準備会議及びメンター訪問
2) 12月16‐17日 第2回RCD開催のための準備会議及びメンター訪問
3) 12月18‐20日 Cコース開催
4) 1月6日 Pre-deploymentブリーフィング会議
5) 1月31日 Pre-deployment演習
6) 2月3日 Dry run/リハーサル
7) 2月4日 タイ国内参加者向けブリーフィング会議
8) 2月8日 最終事前準備会議
【1月31日】Pre-deployment演習
タイの災害管理機関(National Disaster Management Office:NDMO)であるDepartment of Disaster Prevention and Mitigation(DDPM)にて、AHAセンターによる地域調整の元、9か国+日本(JDR)参加によるPre-deployment演習が実施されました。DDPMとしても国際医療支援を受け入れるための国内プロトコル及び手順を確認する機会となります。
各国EMTから送られてくる支援申込書類と手順を確認するDDPMの職員
DDPMがAHAセンターと国際機関との調整を行う一方で、保健省は各国より提出されたEMT情報、医薬品や資機材リストの確認を行います。
【2月8日】タイ保健省とメンター陣、ARCHプロジェクト国内支援委員を交えた最終事前準備会議
本準備会議には、RCD実施全行程の視察を目的として、将来のRCD実施調整機関となるASEAN災害保健医療機関(ASEAN Institute for Disaster Health Management :AIDHM)と2025年ARDEX(ASEAN Regional Disaster Emergency Response Simulation Exercise)主催国のカンボジアから代表者を招待しました。また、ASEAN事務局保健セクター及びAHAセンターには、地域調整演習への実務的支援のために準備会議から参加を要請しました。
【2月9:Day 0】Reception and Departure Center(RDC)and Custom, Immigration, and Quaranteen(CIQ)演習
RDCとCIQ演習はスワナプーム国際空港内に演習場を設置し、各国からのEMTチーム到着に続いて実施されました。
空港到着後にRDC/CIQ演習に参加するベトナムチーム(上)とマレーシアチーム(下)
手順を確認しながら対応するCustom担当者。「今回が初めての訓練なので手順を確認するのも初めて」と。
CIQプロセスの後に設置されれたRDC。
RDCはNDMOが管轄し、タイの担当機関はDDPM。到着後にDDPM担当者から被災状況のブリーフィングを受けるフィリピンチーム。
【2月10日】Day 1
演習のためのWorkshop に続き、EMTCC会議が開かれ演習本番に入りました。Workshopでは主にタイの災害対応に関する情報共有とデータ管理の演習と各国CTIプレゼンテーションが行われました。
Dr. Weerawut Imsamran
(Deputy Permanent Secretary of the Ministry of Public Health)による開会宣言にてRCD1日目が開始。
会場はタイ保健省DPHEM DPHEM Emergency Operations Center
CTIを発表するフィリピンチーム。
フィリピンは昨年WHO EMT Type 1(Fix)の
認証を取得しました。
データ管理の講義をする夏川国内支援委員とチームで手順を確認するベトナムチーム
EMTCC会議開始。DDPM担当者も加わり、I-EMTへのブリーフィング及び活動地の割り当てが発表されます。