コレラ・アウトブレイク対応 臨時病院に緊急対策室を開設しました。
プロジェクトではコレラを含む下痢症サーベイランス(Acute gastroenteritis:AGEサーベイランス)を2023年10月に開始し、保健省の定めたコレラ発生危険地域(コレラ・ホットスポット)に位置する全国5か所の医療施設(サーベイランス・サイト)を拠点として、下痢症の患者さんがどれぐらい発生しているのか、何の病原体に感染しているのか、などの情報を集めてモニタリングする体制の構築を進めてきました。そのような中、ちょうど時を同じくして、2017-18年以来となる首都ルサカでの大規模なコレラ・アウトブレイクが発生し、雨季の開始とともに患者数が急増し、あっという間に深刻な状況に陥りました。
カウンターパートであるザンビア国立公衆衛生研究所(Zambia National Public Health Institute; ZNPHI)はザンビア全土の感染症の発生を見つけ出し、流行状況やどのような患者が発病しているのか等の分析を科学的に行い、ザンビア政府や国民に情報提供することが重要な役割です。アウトブレイクが発生した際、各病院や診療所では、医療従事者が個々の患者さんに対して治療を行いますが、同時にいつ・どこで・どのように感染したか、どのような症状や重症度の感染症か、どのような治療が有効か等を、集約的に調べる疫学調査・データ分析を行うことが、科学的根拠に基づいた有効な対応策を立案し、感染拡大を予防し、被害を軽減するうえで重要です。プロジェクトでは、アウトブレイク発生という緊急事態でも、この非常に重要な科学的根拠に基づく感染症対策への支援を継続しています。
プロジェクトでは、今回のアウトブレイクへの対応として、ZNPHIの感染症専門家、保健省の医療従事者らと協力し、2024年1月に国立競技場(ナショナル・ヒーローズ・スタジアム)に開設された大規模な臨時の病院内に、緊急対策室を開設しました。ここでは、医療資格を持つ人材とデータ管理の経験を持つ人材を配置し、入院患者さんの感染時期や地域、症状、施設内の治療の質・稼働状況に関するリアルタイムの情報収集・分析を行っています。分析結果は速やかにZNPHI・保健省・現場の医療従事者に還元され、ルサカでの感染状況の把握、国レベルでの対応策の立案と施策、患者さんへの質の高い医療サービスの提供に役立っています。今後は刻一刻と変化する感染流行状況をリアルタイムで把握し、感染拡大の防止や被害の軽減に貢献するため、より患者さんに近いコミュニティーのコレラ治療センターにも支援を拡大していく予定です。
病床の様子
ヒーローズスタジアム外観
緊急対策室でデータ入力を指導する今村専門家