ラボマネジメントの活動を紹介します2 質管理活動編
概要編で紹介したように、ラボのマネジメントの本質は、研究所・検査室が安全かつスムーズに実験・検査を実施できるようにし、研究所としての使命や任務(研究や公衆衛生対応)を円滑に遂行することにあります。これは、リソースを活かし組織全体の生産性を向上させ、効率的に成果品を生み出し、企業のビジョンやミッションを実現していくという点では、企業における組織マネジメントとも共通します。
ここで、企業における成果品は、「(質の高い)製品」ということになるでしょう。ザンビアでは、日本の自動車メーカーの車がたくさん走っており、日本製の自動車は品質が良いので日本のメーカーのものを購入したいという現地の方々の声を耳にします。自動車以外でも、日本企業の作る商品は安価なのに機能的で長持ちするので日本のメーカーの製品を買いたいという声を聞く場面が多くあります。これは、日本の企業が質の高い製品を生み出し続けてきたことに対する顧客からの信頼の証なのだと思います。
では、研究所・検査室における成果品とは何でしょうか。それは、上記でも触れましたが、質の高い検査サービスや質の高い研究と言えるでしょう。では、質の高い検査サービスとはなんなのでしょうか。精度も確度も高い検査手法を用いているが結果が返却されるまでに1年かかる検査は質の高い検査といえるでしょうか。逆に検体提出から3時間で結果が返却されるものの結果に再現性のない検査は質の高い検査といえるでしょうか。検査室において、検査の品質を保証し第三者へわかりやすく示すために、アフリカはじめ世界の多くの検査室で進んでいるのが、国際標準化機構(International Organization for Standardization: ISO)が作成した臨床検査室や試験所・校正機関に特化した国際規格(それぞれ、ISO 15189、ISO/IEC 17025)の認定の取得です。これは、各国際規格に定められた「要求事項」を検査室が満たし、検査室が自ら提供すると掲げた検査を適切に実施する技能があることを示すだけでなく、日々の業務を通じてPDCAサイクルをまわして品質の維持と発展を行っているということを示すものです。この認定を取得していることは、第三者にもわかりやすく検査室が提供する検査の「品質」を保証することとなります。
提供する検査の結果が正確で信頼できるものであることを担保するために、ザンビア国立公衆衛生研究所レファレンス・ラボラトリー(ZNPHRL)でも質管理の実践に力を入れています。質管理が対象とするのは日々のラボ内の業務そのものですが、具体的には、日々の検体受付~前処理~検査~結果報告に関する作業の手順を文書化して業務を標準化したり(標準作業手順書[SOP]の作成)、さらにSOPに沿って職員の技能評価を行い検査室としての技術能力を管理したり、作業の記録を文書として残すことで説明責任を果たしたり、内部精度管理や外部精度管理を通して職員の技能と検査結果の信頼性を確認したり、使用する試薬や機材の管理を行ったり、継続教育プログラムを立ち上げ実践したり・・・など日々の業務全般を対象として多岐にわたります。また、定めたマニュアルやSOPの手順と一致しない事象や事柄が発見された際には「不適合」として是正・改善していきます。こうした日々の作業を経て、信頼に足る正確な検査結果を患者・病院に返したり、公衆衛生上の対応の根拠とするためのサーベイランスデータとして積み上げ社会に還元したりしています。
プロジェクトでは、この質管理をZNPHRLで実践するために必要な活動を支援しています。内部文書の作成や見直し、内部勉強会、定期報告会(マネジメントレビュー会議)の開催支援や、質管理実践に必要な内部監査員育成研修会支援などを行っています。
指摘された改善が必要な事柄について対処案をまとめる職員ら
ZNPHRL内外のステークホルダーを交えたマネジメントレビュー会議の開催