成果3:対話と動画で広がる健康づくり――地域から始まるヘルスプロモーション
非感染性疾患(NCDs)は、早期発見と早期の治療開始と継続によって、重篤な合併症を予防し、生活の質を保ちながら付き合える病気です。予防と治療の継続には人々の行動変容が欠かせません。キルギスでは、JICAと保健省が協力し、患者との対話を重視した「モチベーショナル・インタビュー(MI: 動機づけ面接)」の導入と、楽しく学べる健康啓発動画の制作を通じて、地域から始まる健康づくりを推進しています。
対話で引き出す「自分で守る健康」
本プロジェクトでは、患者と医療者との対話にモチベーショナル・インタビュー(MI)という技法を導入しています。患者に一方的に指示するのではなく、患者の話に耳を傾けて双方向の対話をすることによって、患者自身の気づきと意欲を引き出す手法です。
ヘルスプロモーションセンター(HPC)は、定期的に地域医療機関を訪問し、この手法の定着を支援しています。導入当初は患者が戸惑う場面もありましたが、3回目の訪問の頃には患者からの評価が大幅に向上していました。医師の診察時間について、MI研修前は、患者1人当たり6-7分程度で医師からの説明が中心でしたが、MI導入後は患者との対話が増えたことで平均20分となり、患者の理解度・満足度も上昇しています。
トクモク市の診療所では、「患者カウンセリング改善」をテーマに自主的にワークショップを開催。MIのコミュニケーション技法を活かした患者対応で、治療継続率が向上したとの報告も寄せられています。
農村から始まる「地域ぐるみ健診」
地域住民への啓発も活発です。ジャイル地区では、HPCが地域の保健所、家庭医チーム、看護師ボランティアと協力し、住民健康診断を開催。高血圧や糖尿病の疑いがある人には再検査を勧め、MIを活用して受診への動機づけを行っています。
クイズ動画で「楽しく学ぶ」健康知識
保健省とJICA専門家が共同開発した健康啓発動画シリーズも好評です。高血圧や糖尿病の基礎知識をクイズ形式で学べるアニメーション動画を、ロシア語・キルギス語で制作。2025年9月から、ジャイルとトクモクの診療所で放映が始まり、YouTubeや地域テレビ局でも配信されています。
動画例:
高血圧クイズ動画(ロシア語版) https://youtu.be/VYcqK7UNNic
高血圧クイズ動画(キルギス語版)https://youtu.be/wr_JuFG-DDI
これらの動画は、「地域の診療所に行こう」「自分の数値を知ろう」といった行動変化を促す実践的な教材として、地域住民の受診率向上に貢献しています。
継続的な支援で「学ぶ地域」へ
HPCは、これらの活動を単発で終わらせず、各地域への復習研修やマニュアル更新を継続。研修後の評価が低い場合は再指導を行い、スタッフの理解度と実践力を確認する教育サイクルが確立されつつあります。
このヘルスプロモーション活動により、「与える健康」から「共に作り上げる健康」への変化が、キルギスの地域医療で促進されています。
モチベーショナル・インタビュー(MI)の資材活用方法を検討している様子
モチベーショナル・インタビュー(MI)研修中の様子