熟練分娩介助者の技術研修後の経過観察訪問
熟練分娩介助者(SBA)の技術指導
プロジェクトでは、2023年8月から11月に、一次保健医療施設の母子保健サービスの質の向上、特に熟練分娩介助者(SBA)であるレディーヘルスビジター(LHV) *1 と准助産師 *2 の能力強化を目指し、SBA研修を実施しました。この研修の事前・事後評価および研修後の振り返りから、多くのLHVと准助産師の知識・技術が改善されたことが確認されました。しかし、到達度には個人差があり、個別の支援が必要であることも明らかになりました。
そこで、プロジェクトでは、2024年4月から6月にかけて、SBA研修の経過観察訪問を実施しました。昨年、SBA研修で研修講師を務めた二次・三次保健医療施設の産科および小児科の専門医と、プロジェクト実施主体であるパンジャブ州保健局が合同で、プロジェクト対象地域の全ての基礎保健ユニット(BHU)の57施設を巡回訪問しました。
経過観察訪問では、LHVと准助産師に対する基礎的な手技、新生児蘇生法、産科異常出血への対応について、チェックリストを用いて、手技を確認しました。LHVと准助産師は緊張しながらも積極的に手技の確認に参加し、評価後は日々の臨床での困り事について研修講師と活発に議論していました。
男性医師・女性医師によるSBAへの技術スーパービジョンへ向けて
パンジャブ州の一次保健医療施設には通常、男性医師または女性医師が最低1名配置されていますが、彼らは主に診療を行っており、LHVや准助産師への技術的な監督・指導はあまり行われていません。プロジェクトでは2024年3月に、プロジェクト対象地域の男性医師と女性医師に、SBAへの技術スーパービジョンに関する研修も実施しました。今般の経過観察訪問では、この研修を受けた男性医師・女性医師も、同僚であるSBAの技術評価と指導へ一緒に参加することを通じて、LHVと准助産師に対する技術的なスーパービジョンに関する現任研修を行いました。
男性医師・女性医師たちは、積極的に同僚であるSBAへの技術確認と指導に取り組む姿が見られました。また、医師たちは産科・小児科の専門医から直接指導を受けられる機会をとても喜んでいました。今回の経過観察訪問では、SBAの技術・知識の確認に加え、農村部の過酷な環境で医療を提供する医療者のモチベーションの向上につながったのではないかと思います。
プロジェクトでは、今後もさらなる知識や手技の定着を目指し、2024年8月からLHVと准助産師を対象とした再研修と、新生児蘇生手技と産後出血のポスターの設置を予定しています。また、12月には研修講師を務めた産科医・小児科医を中心に訪日研修を計画しています。
*1 LHVは、高校卒業後に2年間の専門教育を受けて就業している者。近年、大学教育化が進み4年制の学士課程を卒業している者もいる。
*2 准助産師は、高校卒業後に2年間の専門教育を受け、かつて地域助産師(Community Midwife)として広く地域で活動していた。施設分娩推進の流れを受けて地域助産師制度自体は廃止されたが、人材不足のため一部の地域助産師は准助産師としてBHUに雇用されている。
母体のリスクアセスメントの確認
新生児蘇生手技の確認
供与機材の管理状況の確認
産後出血の対応についてのポスター