2023.06 第1回本邦研修
フィリピンでは地すべり・斜面崩壊等による道路の交通遮断が毎年のように発生しています。そのため、公共事業道路省は安全で安心な国道の確保、持続可能な国土開発に日夜、取り組んでいます。JICAではこうした道路斜面防災の対策・管理能力強化を目指して「山岳地域における道路防災プロジェクト」を実施中であり、その一環として2023年5月21日~6月6日(17日間)に第1回本邦研修を実施し、公共事業道路省職員12名(本省2名、CAR地域事務所4名、VII地域事務所3名、XI地域事務所3名)が参加しました。
研修の目的は、我が国の山岳道路防災の運用状況と広範な技術・手法の理解することで、次のような具体的な到達目標を目指して実施されました。
- 1 . 日本の道路防災管理と道路防災情報システムから、フィリピンで必要な技術、適用可能な技術を理解する。
- 2 . プロジェクトにおいて導入する対策工、緊急対応、道路ハザードマップ、情報システムに係る技術とその意義を理解する。
- 3 . 公共事業道路省におけるアクションプランを作成する。
これらの到達目標を目指して研修生は、国土交通省関東地方整備局・中国地方整備局、国立研究開発法人土木研究所、NEXCO東日本・中日本、千葉県県土整備局、愛知県建設局、民間会社等から講義を受けたほか、千葉県、愛知県、岡山県の各道路防災対策現場を視察しました。国土交通省関東地方整備局では道路情報モニタールームを訪問し、リアルタイムで交通情報や災害情報を一元管理している日本の体制に強い関心を示していました。愛知県では、県道で発生した災害対応の流れや実施手順について学び、さらには県職員との意見交換会で日本の技術者が苦労している点、道路利用者への情報提供の方法などの質問を多数行っていました。岡山県では、県で実施している住宅地での地すべり対策である地下水の集水井を視察し、フィリピンでの適用可能性や工事の部材の調達可能性について研修生同士で話し合っていました。
また研修最終日には、日本での講義・視察で学んだことを基づいて、本プロジェクトの4つの成果(➀対策工、➁緊急対応、➂道路ハザードマップ、➃情報システム)の観点から、フィリピン公共事業道路省で実現可能なアクションプランを作成し、フィリピン国内での地域事務所ごとに発表を行いました。発表では各地域事務所での災害特性から適用が望ましい対策工法や数量などの提言や、1~2年スパンの短期的な導入技術、10年スパンの長期的な実施体制の構築に関する質疑応答などが活発に行われました。
フィリピンの研修生は今回の研修で学んだ日本の道路斜面対策の最先端技術や効率的な実施体制を、フィリピンの道路管理に取り入れて、山岳地域における災害に強い道路に活していきます。
国土交通省関東地方整備局の道路情報モニタールーム視察
愛知県での道路災害復旧に係る討議
岡山県での地すべり対策工の現場視察
アクションプラン発表会