訓練相談・就業支援室の調査能力アップを目指してワークショップを開催しました(ワークショップ実施の報告)(2024年5月)
近年「リスキリング」という言葉をよく耳にしたり見かけたりするようになりました。リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」iを指しますが、コンゴ民主共和国でも、そういったスキルの大幅な変化を図って自社社員に職業訓練を受けさせる企業があります。その場合、多くの企業は国立職業訓練機構(仏:Institut National de Préparation Professionnelle、《略称:INPP》)に依頼し、INPPの提供する「在職者訓練」を自社社員に受けさせることになります。
コンゴ民主共和国国立職業訓練機構能力強化プロジェクト フェーズ2(通称:SOLIDE-2)では、産業界のニーズに応えられる人材を育成するのはコンゴ民主共和国の産業発展に必要不可欠な要素であると考え、INPPが企業のニーズに応えられるよう、INPP職員・指導員の能力強化に邁進しています。
その一環で、INPPの各地方校に配置されている訓練相談・就業起業支援室(仏:Bureau des Conseillers en Formation et Insertion Professionnelle、《略称:BCFIP》)の職員の能力強化を図り、2024年4月22日~5月4日、キンシャサ校においてワークショップを開催しました。対象はプロジェクトの4つのパイロット校(キンシャサ校、カタンガ校、東カサイ校、北キヴ校)でした。ワークショップの目的は、在職者訓練の評価のために行われる「満足度調査」(訓練が終了する前に、訓練に対する訓練生の満足度を確認する調査)と「追跡調査」(訓練終了の数か月後、修了生が得たスキル等に対する雇用主の満足度を確認する調査)の実施を可能とすることでした。この2件の調査は、BCFIPが担当しているものの、手続きの不明さや職員の経験不足等、様々な原因で多くの地方校が実施していませんでした。
図 1 BCFIP能力強化ワークショップの様子
この目的を果たすべく、ワークショップのファシリテーションを担当したJICA専門家は訓練の評価に役立つ手法とツールをBCFIP職員に紹介しました。具体的に、調査設問を書く際に日本でもよく使われている「リッカート尺度」(設問に対してどれくらい合意するかを「とてもそう思う」「まあまあそう思う」「どちらでもない」「あまりそう思わない」「全然そう思わない」等、複数選択肢から選んで答える方法)や、エクセルを使った回答分析、調査報告書作成に使える文章構成PREP法等について講義しました。
これらのツールと手法を紹介した後、参加者による訓練評価のモデル策定を支援しました。ブレーンストーミング方式で、それぞれの調査を実施するために必要なステップを洗い出し、抽出したステップを業務のフロー図に落としました。ところで、このようなフロー図は作業を記述するために日本で広く使われていますが、コンゴ民主共和国ではその形式はあまり一般的ではありません。BCFIP職員たちには利用しにくいのではないかと少し心配しながら挑戦しました。
この記事を書いている時点で、導入から数か月が経っていますが、「使い勝手がとてもいい」、「ぜひ他のプロセスにも適応したい」との声が上がっており、恐れず新しいものの導入に挑戦して良かったと、今になって思っています。
図 2 ワークショップで作成したフロー図の例
最後に、策定したモデルのとおりに調査を行った際使えるファイルのテンプレート(Google Formsを使った調査票のテンプレート、Google Formsで得た回答を簡単に分析するためのエクセルファイルのテンプレート)をワークショップ参加者たちと一緒に作成しました。
現在、策定したモデルに沿った満足度調査、追跡調査は能力強化対象の4つの地方校で実施されています。モニタリングを行っている最中ですが、中間結果によると、いくつかの困難があったものの全4校で調査が実施されています!今後、モニタリング結果を踏まえ、より使いやすくなるよう改良していく予定です。
引き続き研修やその他の活動の様子を共有していきますので、ご期待ください!
i 石原 直子「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」(オンライン)2021年2月(引用日:2024年10月15日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf