全16校の教員養成校とともに歩んだ5年間 ― PRISMクロージングセミナーを開催
1. クロージングセミナーの開催
2026年6月3日、ルワンダ教育省(MINEDUC)、ルワンダ基礎教育委員会(REB)、国家教育評議会(NESA)、JICAの共催により、「ICTを活用した初等理数科学びの改善プロジェクト(PRISM)」のクロージングセミナーを開催しました。セミナーには、各県教育担当官(DDE)、全国16校の教員養成校(TTC)から校長、3年生の生徒代表、附属校関係者、開発機関など、多くの関係者が出席し、2021年9月から約5年間にわたるPRISMプロジェクトの歩みを共に振り返りました。
セミナーは、①プロジェクト概要の振り返り、②生徒に見られた変化に関する成果報告、③TTC関係者によるパネルディスカッション、④持続可能性に向けたグループディスカッション、という4つのセッションで構成されました。
クロージングセミナー会場の様子
REB局長の開会あいさつ
2. 5年間で積み上げた成果
■ 学力と授業実践の大きな伸び
ベースライン(2024年)とエンドライン(2026年)の学力調査を比べると、3年生の生徒の学力はすべての科目で大きく伸びました。たとえば数学では、理数科教育(SME)コースで44.8点から64.7点へ、初等教育(ECLPE)コースで38.7点から59.5点へと上がり、ECLPEの理科も32.2点から46.9点へと向上しました。これらの伸びは、教育研究で「はっきりとした効果があった」とされる水準を大きく上回るものです。また、教育実習の授業を観察して評価したところ、5点満点の平均が2.74点から3.54点に上がり、評価した6つの項目すべてで改善が見られました。
■ 5年間の主な取り組み
- ICT環境整備:REBと共同で、全16校で合計1,600台のパソコンを更新・修理し、200台以上のスマートフォンを配布。パソコンの稼働率は2022年の84%から99.8%まで改善
- Eラーニングプラットフォーム(ELP):全TTC向けに8コースを開発し、生徒の登録数は13,500件を突破
- 指導員向けのワークショップ:1,600名以上がICTを活用したワークショップに参加
- オンライン継続的職能開発(CPD):延べ2,500名以上が参加。当初はTTCの指導員対象に行っていましたが、附属校の教師や生徒代表も加わる「開かれた学び合い」へと広がりました
3. 現場の声:パネルディスカッションより
PRISM総括杉山の司会のもと、TTCルベンゲラ校長、TTCザザ教務主任、TTCニャマタ3年生生徒、附属校教務主任の4名によるパネルディスカッションが行われました。
その中で、学力と授業実践の伸びをどのように生み出し、さらに伸ばしていくかについて意見が交わされました。学力の伸びは全校で見られた一方、その大きさには学校ごとに差もあり、その要因は設備やカリキュラムの違いではなく「取り組みの丁寧さ」にあったことが共有されました。TTC ルベンゲラでは、ICT機器を備えた教室(スマートクラスルーム)を使う時間割を整え、オンライン学習(ELP)の時間を正式な授業時間に組み込んだことが、成果につながったと報告されました。生徒からは、ICT活用への自信、自分から学ぼうとする意欲、物事を深く考える力、仲間と協力する姿勢といった面での成長が語られました。
パネルディスカッションの様子
生徒代表が自身の経験を語る様子
4. 持続可能性に向けて
セミナー後半のグループディスカッションでは、プロジェクト終了後もPRISMの成果を継続していくための重点事項が示されました。
- オンライン学習(ELP)、オンラインCPDといったPRISMの取り組みを、学校の日常業務に根づかせる
- オンライン学習で得られたデータを活用し、事実にもとづいた指導を続ける
- オンラインCPDや卒業生ネットワークを通じて、協働と学び合いをさらに深める
- 機材・インターネット環境や担当者体制など、インフラと実施体制を維持・強化する
- 授業を録画して振り返る取り組みや模擬授業(マイクロティーチング)など、効果のあった方法を他の教科にも広げる
REB局長のMbarushimana Nelson氏は閉会挨拶で、生徒の学力がすべてのプロジェクト目標値を上回ったことを確認したうえで、「このプロジェクトの終わりは、単なる区切りではなく、これまでの成果を活かした新たな取り組みの始まりである」と述べました。また、JICAルワンダ事務所所長の塩塚美奈子氏は、「振り返り、共有し、改善する」という文化がルワンダの教員養成に根付いたことへの手応えを語りました。
セミナーでは、ICT教室の時間割づくりや、オンライン学習システムの活用強化、卒業生のネットワークづくりなど、具体的な行動計画が確認されました。REB、MINEDUC、各TTC、そしてPRISMチームがそれぞれの役割を担いながら、2026年8月のプロジェクト終了に向けて、これらの取り組みを進めていきます。
5年間、16校のTTCとともに築いてきた「ICTで学びを見える化し、データと対話を通じて学び合う」文化は、プロジェクトの終了後もルワンダの教員養成校に根付き、次世代の教師教育を支え続けていくことが期待されています。
セミナー参加者との集合写真