ベトナム国北部地域における安全作物バリューチェーン強化プロジェクトからの協力で「太陽熱土壌消毒法マニュアル」がラオスでも利用可能になりました
調査対象地域の一つであるチャンパサック県ボロベン高原において、輸出品目の一つとして高いポテンシャルがあるキャベツを対象品目としたパイロットプロジェクトを実施しています。調査において、同地域に広がるキャベツ畑においては、難防除土壌病害である根こぶ病が蔓延していることが判明しました。これは病原菌が根を侵し、水分吸収を阻害することで、生育の遅れや枯死が発生し収穫できなくなる病害です。被害の大きい村ではキャベツ栽培を断念するほどの影響が出ています。キャベツに限らずアブラナ科作物全般に広がる病気で、壊滅したハクサイ畑も確認されました。この病原菌は20年以上土壌中に生存するため、防除対策は毎年行う必要があります。
これまでプロジェクトでは、輪作、石灰施用、農薬施用、抵抗性品種導入、微生物による生物的防除、太陽熱土壌消毒法に関する試験の実施を支援してきました。その結果、現時点において、ラオスでは「太陽熱土壌消毒法」が最も即効性があるという結果が得られました。この技術は、太陽熱を利用して病害虫や雑草種子をいわば“蒸し焼き”にする方法です。具体的には、畑に堆肥や肥料を施用後、畝立てし、透明プラスチックシートで被覆します。ちなみに日本でも広く実施されている手法であり、梅雨明けから8月末までに4週間程度処理を行うと、多くの土壌病害や害虫の卵及び幼虫、雑草種子が死滅します。
プロジェクトでは、この技術をラオスにおいて普及する上で、ベトナム国にて実施中の技術協力プロジェクトとの連携を模索し、協議してきました。現在ベトナム国では「北部地域における安全作物バリューチェーン強化プロジェクト」が実施されており、安全作物生産のための野菜栽培技術の一つとして、ラオスに先駆けて「太陽熱土壌消毒法」が紹介されています。既に「太陽熱土壌消毒法」の高い効果が確認され、晴天が続く場合には22日間の処理で効果が得られることが確認されています。同プロジェクトではこれらの知見をまとめたマニュアルを作成し、2023年末にカウンターパートである国立農業普及センターが出版し、積極的に利用されています。
今般、同センターとの協議の結果、マニュアルのラオス語版への翻訳とラオスでの技術普及について承諾が得られました。ラオス語版マニュアルが完成しましたので、今後ラオス政府はマニュアルを利用した同技術の普及活動を拡大していく予定です。ベトナム国の技術協力の成果が国境を越えて利用されることで、ラオスにおいて戦略作物として期待の高いキャベツの安定的な生産を通じてバリューチェーンが改善され、一層の輸出拡大に寄与することが期待されます。
多くのキャベツの葉が萎れている。発病率は60-80%。パクソン郡コントン地区にて2022年6月29日に撮影。
キャベツの根が激しく変形し、毛根が少ない。パクソン郡コントン地区にて2022年6月29日に撮影。
ベトナムで作成された野菜栽培技術マニュアル
野菜栽培技術マニュアルのラオス語版