ヘリコバクター・ピロリ感染調査の実施
2025年3月17日から4月25日までの期間、ブータンのティンプー市内に住む人々を対象に、王立医科大学、王立疾病管理センター、国立中央病院の協力を得て、ヘリコバクター・ピロリ感染の調査が実施されました 。
この調査は、本事業で開発したイムノクロマト法によるピロリ菌抗原の便中検査キットを使用したピロリ菌現感染率の調査とピロリ菌除菌薬の遵守状況を評価することを目的としています 。今回の検査で使用された検査キットの一部は、日本企業での研修で王立疾病管理センターのブータン人研究者が製造したものです。また、王立疾病管理センターでは、国内初のイムノクロマト検査キットの製造に向けて、製造室の準備が現在進行中です。
ヘリコバクター・ピロリ感染の除菌は、ヘリコバクター・ピロリによる胃・十二指腸潰瘍の治癒および胃癌発症リスクの軽減が期待でき、日本をはじめとした胃癌好発国では、胃癌の基本的な予防対策として推奨されています 。
今回の検査でピロリ菌感染が認められた患者は、14日間の除菌治療が行われ、その様子はプロジェクトで開発した服薬指導アプリへ記録されます。また、除菌治療成否を評価するため、除菌治療終了から1か月後に除菌治療対象者に対して再検査が行われます。
本事業におけるこれまでの調査結果から、ブータン国内でも薬剤耐性菌の流行拡大が確認されています。今回、除菌治療の不成功者は、服薬指導アプリからの順守率の評価と薬剤耐性菌の検査、さらに、内視鏡検査の受診を予定しています。
この調査は、胃癌好発であるブータンでのヘリコバクター・ピロリ感染の検査体制の確保と治療成績の向上を目指した包括的な取り組みであり、同国における胃癌対策の礎となることを期待します。
(Mothithang Thromde Health Centreで便中抗原検査の様子)
(大分県宇佐市アドテック株式会社での研修)
(王立疾病管理センターに新設されたイムノクロマト検査キット製造室)
(国立中央病院での服薬指導アプリへの登録の様子)
(服薬指導アプリの登録画面)