【更新情報】PNG保健省ウェブサイトにNTDs国家戦略計画のデータ版を掲載
2026年4月、2025年6月にパプアニューギニア保健省より公表された
「顧みられない熱帯病(以下、「NTDs」)国家戦略計画(2025–2029)」のデータ版が、同省ウェブサイトに掲載されました
。本プロジェクトは、同計画の一部内容に対する助言やローンチ式典の開催支援に加え、今回のデータ版の一般公開に向けた調整支援も行いました。
今回の公開により、NTDs対策に関わる国内外の関係者が同一の戦略文書へアクセスできる環境が整い、情報共有や関係機関間の連携促進が期待されます
。また、保健分野における透明性の向上や情報アクセスの改善という観点からも、PNGの保健行政にとって一つの前進と言えます。計画を策定するだけでなく、一般公開を通じて広く活用できる環境が整備されたことは、関係者間の共通理解の醸成や説明責任の向上にも寄与するものと考えられます。
パプアニューギニア(以下、「PNG」)では近年、各種感染症対策や保健プログラムにおいて国家戦略やガイドラインの整備が進められている一方で、その策定・改訂には人的・技術的リソースの制約も見られます。こうした中、保健省と世界保健機関(以下、「WHO」)等による伴走型の取組を通じて計画策定が進展していることは、保健行政の基盤強化という観点からも重要な意味を持ちます。本プロジェクトによる支援も、NTDs対策の推進に加え、保健省の計画立案・実施能力の向上を後押しする取組の一つとなっています。
こうした取組の背景には、PNGにおいて依然として多くのNTDsが公衆衛生上の課題として残されている状況があります
。リンパ系フィラリア症(LF)をはじめ、皮膚症状や障害を引き起こすNTDsが多く存在しており、継続的な疾病対策が求められています。
NTDsの多くは予防や治療が可能な疾患である一方、水・衛生環境の未整備や保健医療サービスへのアクセス制限、疾病に関する知識不足などを背景に、遠隔地域や脆弱なコミュニティを中心として感染が広がりやすい特徴があります
。
同計画では、限られた保健医療資源を有効活用するため、疾患横断的な統合アプローチを推進し、集団投薬(MDA)、サーベイランス、地域啓発等を通じて各種NTDsの制圧を目指す方針が示されています。従来は疾患ごとに実施されることの多かった対策を統合的に進めることで、人的・財政的資源の効率的な活用が期待されています。また、こうした取組は個別疾患への対応にとどまらず、地域保健システムの強化や保健サービス提供体制の効率化にもつながるものと考えられます。
NTDs
対策は感染症そのものへの対応に加え、遠隔地域や脆弱なコミュニティを含むすべての人々が必要な保健医療サービスへアクセスできる体制づくりにも関連しています。この点で、NTDs対策はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進とも密接に関係しています
。UHCとは、すべての人が必要な保健医療サービスを経済的負担なく受けられることを目指す国際保健分野の重要な理念です。
特にMDAは、感染拡大の抑制だけでなく、将来的な疾病負担や障害の軽減にも寄与する公衆衛生上重要な取組です
。
NTDs対策への継続的な投資は、人々の健康改善に加え、教育や就労機会の維持、地域社会の発展、さらには健全な労働力の確保にもつながることが期待されています
。一方で、NTDsはその健康影響や社会経済的影響の大きさにもかかわらず、一般市民や政策決定者の間で十分な関心が払われていない場合も少なくありません。その結果、必要な資源の確保や継続的な投資が課題となることがあります。こうした意味においても、NTDsに対する理解と関心を高める取組は重要です。このような観点から、
NTDs対策は保健分野のみならず、社会経済開発の基盤づくりにも重要な役割を果たしています
。
本戦略計画は、今後のPNGにおけるNTDs対策を中長期的に推進するための共通指針として位置付けられており、個別事業の実施にとどまらず、関係機関が連携して取組を進めるための基盤となることが期待されています。今後も保健省、州保健局、WHOをはじめとする関係機関・パートナーと連携しながら、NTDs制圧と地域保健体制の強化に向けた取組が進められる予定です。
【掲載箇所】
Ministry of Health, National Department of Health - Website
Publications > Policies & Standard > Neglected Tropical Diseases (NTDs) Program
URL: https://www.health.gov.pg/subindex.php?acts=1
掲載サイトで閲覧できない場合は、以下よりPDF版をダウンロードいただけます。
本国家戦略計画の概要・ポイント
PNGにおける「NTDs国家戦略計画(2025–2029)」は、今後のNTDs対策を推進するための国家戦略として策定されました。以下は、本戦略計画の主なポイントです。
- PNGにおける包括的なNTDs国家戦略として位置付けられており、リンパ系フィラリア症(LF)、風土病性トレポネーマ症(Yaws)、土壌伝播蠕虫症(Soil-Transmitted Helminths: STH)、疥癬(Scabies)、トラコーマ(Trachoma)、ハンセン病(Leprosy)、ブルーリ潰瘍(Buruli Ulcer)、デング熱(Dengue)、狂犬病(Rabies)等、約10のNTDsを対象としている。
- LF、Yaws、STH、疥癬、トラコーマ等の流行地域を対象に、集団投薬(MDA)、サーベイランス、症例管理、地域啓発等を組み合わせた疾患横断的・統合的アプローチを推進している。
- 限られた保健医療資源を有効活用するため、16の流行州において複数のNTDsを対象とした統合的な介入を推進し、効率的かつ持続可能な疾病対策を目指している。
- 戦略優先分野(Strategic Priorities)として、①政府オーナーシップおよび関係機関間連携の強化、②資金動員と財政的持続可能性の向上、③治療・介入へのアクセス拡大、④モニタリング・評価およびオペレーショナルリサーチの強化 - の4分野を設定している。
- 保健省、州保健局、WHO、研究機関、NGO、民間セクター等との連携を通じ、エビデンスに基づく持続可能なNTDs対策体制の構築を目指している。
- 本戦略計画は、今後のNTDs対策を推進するための中長期的な枠組みとして活用されることが期待されており、関係機関による事業計画策定、資源動員、モニタリング・評価等の基盤となることが期待されている。
皮膚NTDs啓発ポスターの前で、NTDs国家戦略計画を紹介するPNG保健省NTDsチームリードオフィサー