“Power of Sport”を考える−Mostar Region Youth Sports Eventの開催−

2017年3月30日

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2017年3月11日、モスタル市スポーツ協会と共催で、スポーツイベントを実施しました。ボスニア・ヘルツエゴビナはクロアチア系の人々及びムスリムの人々が主体のボスニア・ヘルツエゴビナ連邦(以下、連邦)とセルビア系の人々が主体のスルプスカ共和国(以下、RS)のふたつの構成体から成る連邦国家です。

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プロジェクトの舞台であるモスタル市は、連邦に属するネレトバ県の県都であり、クロアチア系の人々とムスリムの人々が川を挟んで西側と東側に別れて住んでいますが、東に少し行くと、そこはもうRSです。

今回のイベントは、モスタルから東に約40kmに位置するRSのネヴェシニエという町の男子バスケットボールチームの生徒たちと、モスタルから西に20kmほどのところに位置する西ヘルツエゴビナ県の県都であるシロキ・ブリイェグ(以下、シロキ)の女子バレーボールチームの生徒たちをモスタル市に招待しました。ネヴェシニエの生徒たちはセルビア系、シロキの生徒たちはクロアチア系、そして迎えたモスタルの生徒たちはクロアチア系とムスリムの両方の生徒が混ざっています。(生徒たちは13歳〜14歳)

モスタル市は男子女子ともに、両民族が混ざった混合チームを結成し、それぞれネヴェシニエの男子チーム、シロキの女子チームと対戦しました。ネヴェシニエとシロキのチームは普段からチームメイトとして練習しているので、試合中も随所にいいプレーやチーム内で声を掛け合い、互いを励まし合う姿などが見られました。一方で、モスタル市の混合チームは、一人一人の技術は高いのですが、どこかぎこちない様子です。それもそのはず、普段は一緒にプレーをしていない複数のチームから集められた、一日限りのチームメイトだからです。パスワークやフォーメーションなどがなかなか上手くいきません。

しかし、勝敗はともかく、参加した生徒たちは全員真剣にプレーをし、初めて会ったばかりのチームメイトや試合相手とともに純粋にプレーを楽しんでいました。

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女子バレーボール試合後の様

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男子バスケットボールの試合

午後から『スポーツの力』を考えるワークショップを実施しました。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が作成している教材を使用して、主に『フェアプレー』を考えるセッションを行いました。生徒たちは、スポーツのどんなところが好きなのか、なぜスポーツをするのかなど、日頃感じていることを改めて振り返り、グループで話合い、自分たちの言葉で表現しました。

なぜスポーツをするのかということに対して、『スポーツは自分の時間を有効に活用できる』『スポーツは友情を育む』『スポーツを通して、忍耐力や目標を持つことの大切さを学んでいる』などの意見が積極的に出てきました。最後にそのスポーツの力をどうやって発展させていくのか、スポーツの力を守るためにどんな行動が望ましいのかを考えました。生徒たちからは『寛容性』『公平性』『助け合い』『尊敬』『対話』『忍耐』などのキーワードが発表され、フラッグにそれらの言葉を書き記しました。

【画像】スポーツの力を守るために大切なことは…

ネヴェシニエとシロキの生徒の中には、『初めてモスタルを訪れた』という生徒も少なくありませんでした。自分たちの町とは違い二つの民族が一緒に暮らしているモスタルを見て、どう感じたのでしょうか。また、今日一日だけのチームで試合をしたモスタルの生徒たちは今回のことをどう思ったのでしょうか。この日のために結成されたチームの中で、ベストのプレーをしようと努力をしていましたが、何が足りなかったのか、どうすればもっといいチームプレイができたのでしょうか。今回のイベントは彼らに様々なことを考えるきっかけを提供しました。プロジェクトでは、もう一度同じ生徒たちを集め、また一緒にプレーをし、話し合う機会を提供したいと考えています。そして、スポーツを通じて、彼らの中に芽生えた仲間意識をもっともっと醸成していってほしいと考えています。このような機会を通じて、同じ国内、地域の中に、自分とは違う環境や考え方の下に暮らしている人がいることを知り、そのことに興味を持ち、相手のことを考えてほしいと思います。そして、自分たちの考えと行動次第で、これからの将来を変えていくことができるのだということを知ってほしいと思います。

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ワークショップでの話し合い

【画像】ネレトバ川にかかる橋『スタリモスト』