Jリーグとのコラボイベント開催

2018年9月7日

サッカーと国際協力

2018年9月6日から9日、プロジェクトは日本から公益社団法人日本プロサッカーリーグ(以下、Jリーグ)のみなさんをお迎えし、モスタル市スポーツ協会(SSGM)協力の下、サッカーイベントを開催しました。これは、Jリーグが2011年から実施している『サポユニ for smile』(注1)で、日本のサポーターから寄付されたユニフォームを途上国の子どもたちにプレゼントし、サッカーを通して多くの子どもたちに夢や希望を与えようという趣旨のもと実施されています。2017年までにバヌアツやスリランカ、ブータン、モンゴルなどの7カ国、計4,277枚のユニフォームが世界中に届けられたそうです。

JICAは2015年9月、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)及びJリーグと、開発途上地域への国際協力のより効果的な実施と、スポーツを通じた国際協力の一層の発展をめざし、連携協定を締結しています。これまでも国内外で様々な連携活動が実施されてきましたが、今回は、我々プロジェクトが取り組んでいる『スポーツを通して民族の垣根を越え、人と人との絆を深めよう』という趣旨に賛同していただき、このボスニア・ヘルツェゴビナ(以下、BiH)のモスタルにてコラボレーションイベント開催の運びとなりました。

小学生たちとの交流

初日の9月6日は、午前中モスタル市の4つの小学校から約100名、午後は市内8つのサッカークラブの子どもたち約100名が参加し、Jリーグで元プロサッカー選手として活躍した山口慶さん指導の下、サッカーを楽しみました。

まだ夏の日差しが残る秋晴れの空の下、子どもたちはイベント開始前から、緑の人工芝のピッチで飛んだり跳ねたりと興奮気味。色とりどりのユニフォームが並べられると、「何色にしようか」「どのデザインがいいかな」と目をきらきらと輝かせて待ちきれない様子です。ユニフォームを手にし、袖を通した子どもたちが一気にピッチに駆けだします。山口コーチの指示でウォーミングアップ代わりの『手つなぎ鬼』が始まると、そこら中から大きなかけ声や歓声が上がり、ピッチはすぐに笑顔であふれました。

モスタル市は紛争が終結して20年以上が経つ今でも、ボシュニャクと呼ばれるムスリムの人たちとクロアチア系民族の人たちが川を挟んで東と西に別れて暮らしています。ほとんどの学校も民族ごと分かれているので、普段はなかなか交流する機会がありません。このイベントでも始めて出会う子どもたちもたくさんいたわけですが、互いに手を繋ぎながら、満面の笑顔で走り回る子どもたちの姿からは、民族同士の諍いなどは想像ができません。

サッカーのゲームが始まると、大人顔負けの真剣な顔でみんなボールを一心に追いかけます。山口コーチがボールを持つと、何人もの子どもがコーチを取り囲み、ボールを奪おうと必死です。コーチは、相手が子どもなのでもちろん手加減してプレーしているのですが、時折見せる高速ドリブルやロングパスに子どもたちは大興奮です。山口コーチはあっという間に子どもたちのスターとなり、試合後は子どもたちからサイン攻めにあっていました。

【画像】

ユニフォームを手にする子どもたち

【画像】

手つなぎ鬼を楽しむ様子

【画像】

サッカーゲームの様子

【画像】みんなで記念写真

モスタル市とセルビア・クラグイェヴァッツ市青少年との交流

二日目の9月7日には、プロジェクトとSSGMが共催するスポーツ交流イベントにご協力いただきました。このイベントは両市の間で恒例行事となっており、異なる民族の子どもたちがホームステイやサッカー、バスケットボールの試合等を通して、交流するために実施されているイベントで、今年で8年目を迎えます。春にはモスタルの青少年がクラグイェヴァッツを訪れ、夏にはクラグイェヴァッツの青少年がモスタルを訪れます。

プロジェクトでは、昨年から日本式UNODKAIを提案し、競技スポーツだけではなく、誰もが簡単に楽しめるアクティビティを通して、競技を越えた友情を育んでもらおうと取り組んでいます。UNDOKAIでは、障害物競走、二人三脚、玉入れ、綱引きといった日本ではおなじみの種目を行い、綱引きでは大人チーム対子どもチームで闘い、盛り上がりました。

UNDOKAIの後には、両市のサッカークラブの子どもたちにユニフォームが手渡され、山口コーチや他の大人たちと一緒に試合を楽しみました。

【画像】

障害物競走の様子

【画像】

綱引きの様子

【画像】

ユニフォームを着て山口コーチと記念撮影

民族融和への想い

民族や宗教といったそれぞれの背景を背負って暮らす人々にとって、個人の生き方や社会の在り方を変えることは容易な事ではありません。民族紛争という悲惨な体験を抱えた大人たちが、過去を忘れ明るい未来を描くことはとても難しいことです。しかし、これまでもスポーツを通じた様々な活動を通して出会った子どもたちの笑顔は純粋です。みんな一生懸命に走り、ボールを追いかけ、勝敗に一喜一憂します。そして、そんな子どもたちの笑顔を守りたいと考えている大人はたくさんいると感じます。誰もが自分の子どもに明るい未来を描いてほしいと考えています。それは、日本でもBiHでも世界中どこでも同じでしょう。プロジェクトでは、そんな人々の想いを拾い集めて、ひとつでも多くの種をまき、現地の人々が育てていくための手助けができればと考えています。

今回、Jリーグのみなさんとこのような素晴らしいイベントを一緒に開催できたことにとても感謝しています。これからも、“チームジャパン”としてこのような連携活動がより一層発展していくことを願っております。ご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございました。

【画像】モスタル市・クラグイェヴァッツ市スポーツ交流集合写真