キューバ農業生産体制の変化

2017年7月6日

2017年2月

キューバ人は、コメを主食としており、一人当たり年間コメ消費量はなんと60kgを超えています(2015年の日本の一人当たり年間コメ消費量は57kg)。しかし、米の自給率は2014年時点で約55%、同様に基礎穀物であるフリホール豆とメイズについても、約53%、34%と低く、小麦に至っては100%輸入に頼っています。

キューバは社会主義体制のもとに、大規模機械化農業によって、国民の食料を生産してきました。しかしながら、1991年にキューバ経済の後ろ盾であったソビエト連邦が崩壊、これにより食品、農業生産資材を含む様々な物資の供給も停滞し、国民の食糧事情が大幅に悪化しました。このため、キューバ政府は農業生産増大による食糧自給率向上を国の重要課題の一つに掲げています。

2007年、キューバ政府は農業生産増大に向けた政策の一つとして、農業利用が可能な未利用国有地の国民への無償貸し出しを開始しました。2015年8月作成のキューバ農業省の資料によると、この時点までに161万ヘクタールの未利用国有地が20万5千人の国民に貸し出されました。同資料での同国総農地面積は634万ヘクタール、貸し出し面積はこの25%に相当します。これと並行し農業生産体制も、それまでの計画経済に基づく大規模国営企業重視から、個別農家の利益に焦点を当てた農業組合重視に変化してきました。この流れに乗り、時には50ヘクタール以上にもなる大規模農地を数十名の季節労働者を雇用して耕作し、大きな利益を獲得する農家も現れてきました。他方、国有地受領者には農業の知識や経験を有さない者もいるため、十分な利益を得られない農家は多く、食料増産が伸び悩んでいる状況です。これらの農家の成功、ひいては食料増産を導くには、“如何に効率的に営農技術情報を伝え、この能力を向上させるか?”が重要となります。つまり普及体制の構築、本プロジェクトの挑戦そのものです。(農業普及システム(普及実施促進):吉野倫典)

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25人の季節労働者を有する大規模個別農家。このような成功農家も増え始めている。 出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム