青年の島と日系人

2017年8月31日

2017年4月

青年の島(Isla de la Juventud)は、キューバ本島から南へ約100キロメートルに位置する人口約8万人の中央政府直轄の特別自治区です。これまでアクセスの不便さ等で開発が遅れていましたが、近年、キューバ政府も島内での食料増産を目指し、農業生産に積極的に取り組むようになってきました。

キューバ本島は、近年、気候変動等の影響で、特に東部地域では水不足に見舞われ、農業にも大きな被害が出ていますが、青年の島は湖も点在し、水資源が豊富で、これまで営まれてきた果樹栽培に加え、作物の多様化に取り組み、稲作のポテンシャルも高く、これから本格的な水田耕作が始まろうとしています。

また、これまで植物検疫所だった機関が今年から穀物研究所の地方試験場として改組され、島の穀物増産に貢献していくことになりました。本プロジェクトの案件形成段階から青年の島を協力対象地域に加えるようキューバ政府からの強い要請があり、今後プロジェクトでは同島の穀物増産を目指した普及事業を展開していく予定です。

キューバの砂糖ブーム(注)もあり、この青年の島に最初の日本人がやってきたのは1908年。その後1930年代半まで入植が続きましたが、第2次世界大戦中は敵国民とされ、男性約350人か強制収容されました。同収容所は現在、プレシディオ・モデーロ国立記念館として保存・公開されています(キューバ革命の指導者フィデル・カストロ氏も1953〜55年にかけ、反政府運動容疑で収監されていました)。

2008年には日本人移住100周年を祝う記念行事が同島で催され、現在、約200名の日系人が主に農業に従事しています(キューバ全土における日系人は約1000人)。今年の3月に同島を訪問し、日系2世の原田さんにお話を伺う機会がありました。野菜栽培を中心に、多角的な農業を展開されているようでしたが、今後、稲作の普及にも力を入れていくという当方の説明に、日系人は白米を食べており、大いに期待するとのお話でした。このように本プロジェクトは将来的に青年の島在住の日系人農家にも裨益するものと期待しています。

なお、青年の島は海洋冒険小説の名著「宝島」の舞台にもなったともいわれ、豊かな自然資源に恵まれ、今後はハバナからのオプショナル・ツアーとしての観光開発も多いに期待されています。近海には伊勢エビ、カニ等、魚介類も豊富で、スキューバ・ダイビングの国際大会が開催される有名なスポットもあり、今後キューバ観光の穴場になりそうな予感です。(チーフアドバイザー:北中 真人)

(注)サトウキビ産業を中心として開発されてきた青年の島は、20世紀初頭から空前の砂糖ブームに沸き、世界中から大勢の農業移民が入植した。

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今後、青年の島における農業普及の活動拠点となる、地方試験場事務所。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム

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青年の島で農業に従事されている日系2世の方々からヒアリングを実施。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム