キューバの名産品(コーヒーの話)

2019年3月8日

2018年12月

キューバの名産品と言えば、葉巻とラム酒とコーヒー。今日はコーヒーのお話。キューバのコーヒー栽培は、最初のコーヒー園がハバナ近郊のボジェーロス市でオープンした1748年といわれていますが、その生産量は18世紀末にハイチ独立紛争でキューバ東部にフランス人がハイチ人とともに大量に移民してくるまではほとんど増加しなかったようです。しかしその後、東部を中心にキューバ各地でコーヒー園がオープンし、1883年にはハイチ産コーヒーの生産が低迷したこともあり、輸出量は32千トンに達しました。19世紀の中頃にはキューバはヨーロッパへのコーヒーの主要輸出国にまで成長しました。

その後、コーヒー栽培は順調に発展し、革命の翌年の1960年には約60千トンの生産を記録しました。生産の中心は中央部と東部地域の山間地でしたが、その後都市部への労働者の移動により過疎化が進み、全体としてコーヒー生産は停滞しました。政府はコーヒーを復興させるため、品種を味はいいが生産量が低い古いティピカ種から生産量の多いカトゥラ種や他種へと更新したり、再定住化のため農村基盤整備や小中学校建設等も併せて行いました。また、コーヒー豆の適正買取り価格の設定、医療サービス、クレジット、住宅等の提供を行い、これによりようやく都市部への移住にブレーキがかかりました。

現在、輸出用としてアラビカ種が主にキューバ島中央部と東部の標高の高い山間地で栽培され、国内用としてロブスター種が標高の低い地域で栽培されています。日本には主に中央部のシエンフエゴス県トリニダー市近郊のエスカンブライ山系で栽培されたコーヒーが「クリスタル・マウンティン」という銘柄で輸出されており、コーヒー愛好家の間では人気があります。キューバ国内では通常5銘柄程度のコーヒーがスーパーで販売されていますが、ドリップ式コーヒーに適した日本人に人気がある銘柄が臙脂色の袋のセラーノ(Café SERANO)です。機会があればぜひお試しください。

キューバ・コーヒーの特徴は、他国産にない「香りの良さと程よいライト感(味)」の組み合わせだと言われ、国際市場ではプレミアム価格で取引されています。日本のコーヒー業界も米国との国交回復以降、キューバ・コーヒーに熱い視線を送っており、今後、地場産業としてその発展が大いに期待されています。しかし、近年、気候変動による水不足やハリケーンの影響でコーヒー園にも大きな被害が出ており、輸出に廻る量があまり確保できない状況になっており、日本でもキューバ産コーヒーが手薄になっているようです。今後、キューバ政府が積極的に復興に取り組んでいこうとしているハリケーン常襲地帯の東部地域のコーヒー開発・復興には、日本としても官民が連携して何かできることがあるのではないかと思います(続く)。
(チーフアドバイザー:北中 真人)

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ハバナ旧市街のコーヒーショップは観光客で賑わう。
出典:キューバ国基礎穀物のための農業普及システム強化プロジェクト・チーム