ICTを活用した学校モニタリングシステム

2022年7月26日

エジプトでの学校や地方の教育事務所では、インターネット環境がないところが多く、学校モニタリングをし、データを集めるのは決して簡単ではありません。しかし、そんなエジプトで活用されているのが、「Epicollect 5」というオフラインでデータ入力できるアプリです。

エジプトでは2019年から全土で特別活動担当指導主事が、このアプリのアラビア語版を使用し、モニタリングを行っています。驚くべきことにアプリを開始し、3カ月の間に100%定着し、現在109人の指導主事が各地でモニタリングを行っています。

「Epicollect 5」は、データ収集・送信、アンケート調査を実施したり、位置情報(GPS)、写真、動画情報を集め、クラウド上で集めたデータを見ることが出来ます。また、Google Formより複雑な質問票を作成することができます。アプリ内の殆どの質問事項は複数回答候補欄からの選択式で回答ができるようになっているため、データ入力者もデータ分析者もより簡単に使用できるのが特徴です。

評価が難しい、学級会や学級指導などは、アメリカで開発された表を用いて学習の達成度を測定するルーブリック評価方法を用いていますが、この評価を用いることで、評価者は抽象度の高い課題であっても、あらかじめ作成しておいたルーブリック表を基に、授業者の成果を偏りなく細やかに評価できます。このアプリでは、モニタリングシートの質問事項に組み込まれたルーブリック評価選択肢(小学校は5段階評価、幼稚園は4段階評価)を選択することで、どの指導主事も同様に評価できます。また指導主事が文字入力でコメントを記すこともできます。

これらのモニタリングデータは、2週間に1度の頻度でアップロードすることになっており、クラウド上に集まったデータは、教育・技術教育省Project Management Unit(PMU)とプロジェクトチームが内容をチェックし、記入に漏れがないかフィードバックしています。

このモニタリングシステムを始めたことで、PMUとプロジェクトチームは、指導主事のモニタリング状況を一目で確認でき、指導を行うことできるようになりました。各学校の活動状況が、直ぐに確認でき経年変化もわかります。データは簡単にエクセルシートに変換でき、グラフ化などの分析も特別な技術が必要ないので、各学校の特活の進捗や対象校全体の傾向がデータから容易に分析できます。どのように今後支援をしていくかを議論する際も、基本データとして使用できるようになりました。

そして最大の特徴である、インターネット状況が悪い地域でも携帯電話回線があれば安易にデータがアップロードできるためデータ収集が以前より容易にできるようになりました。

未記入箇所のチェックとフィードバックの労力や自由記述の分析の機会がまだ持ててないことや、入力する指導主事によって、ルーブリック評価の値がまちまちになっているケースなど課題はありますが、進捗の定量的な「見える化」ができるようになった意義は大きいです。

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Epicollect 5記入画面(英語版)

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Epicollect 5データを活用したデータ分析の一例(フーズ1完了報告書からの抜粋)