気候変動レジリエンス計画強化のための対象地選定会議の実施

2022年4月20日

本プロジェクトの主要な活動の一つとして、気候変動レジリエンスのための計画プロセスを強化するため、オロミア州のパイロット郡で行動計画を策定することとしています。また、連邦農業省がパイロット郡での成果や経験を全国レベルに展開し、国全体の気候変動に強靭な体制を作ることを最終的な目的としています。パイロット郡での具体的な活動を展開していくにあたり、事業対象地域を選定し合意する必要があり、その選定は「気候変動適応策計画ゾーン(APZ)」のレビューに基づき実施することになっています。APZとは、エチオピア政府の気候変動対策の中心政策である「気候変動レジリエンス・グリーンエコノミー(CRGE)」を農林業分野で実践する上で、具体的施策を検討・計画するために区分されている地理的範囲のことです。様々な気候、地形、植生などが多様に分布するエチオピアにおいて、各APZの下では、農林業の特徴、自然・資源環境、住民の生計様式、気候変動のリスクやこれに起因する影響などが概ね共通するとされるため、気候変動適応策を検討・計画する上で参照する広域単位として概念づけられています。

下図に示すとおり、エチオピア全国には14のAPZが存在し、オロミア州にはこのうち12のAPZが含まれます。オロミア州は、気候・自然・社会条件が多様であると同時に、エチオピア全土の特徴の代表性が高いと言えます。本プロジェクトでは、この中からオロミア州を代表するようなAPZを3つ選定し、選定したAPZの範囲でさらにプロジェクトの活動対象地域を具体的に定めることにしています。このため、プロジェクト実施機関である農業省やオロミア州の担当局自らが、どのAPZを優先してプロジェクト活動を展開していくのか、まず決める必要があります。

2021年12月以降、JICA専門家の助言を踏まえつつ、オロミア州政府から任命された担当者を中心にAPZ選定にむけた検討を行いました。情勢変化や新型コロナの影響が続く中、オンラインでの協議を通じて検討を継続した結果、APZの選定案が今般まとまりました。

3月29日、オロミア州担当者2名により、実施機関のプロジェクトマネージャー等に対して選定案についてプレゼンテーションが行われました。この説明では、第一にオロミア州内の農林業とこれに基づく人々の生計様式の違いに注目し、農業主体型、農林業混合型、移牧混合型の3つの態様に基づきAPZを選定する方針が示されました。それぞれに対応するAPZの中でも面積が相対的に大きく、かつ気候変動対策が社会経済活動面に及ぼす効果が期待できるAPZを選ぶとの方針の下、2つのAPZを対象とすることが説明されました。具体的には、(1)湿潤高地(Moist Highland):野菜などの園芸作物と穀物栽培を行う農業が盛んで、渇水・洪水の発生ならびに降雨量変動のリスクが大きい地域と、(2)温帯低湿地 中高地(Tepid Sub-Humid Mid-Highland):コーヒー豆などの森林産物を採取する森林利用と農業の混合が見られ、主に洪水発生と降雨量変動のリスクが大きい地域です。さらに、関連する政府プログラムとの連携や治安面でのリスク検討を踏まえて、南西シェワ県(湿潤高地)とジンマ県(温帯低湿地 中高地)を事業活動地とすることがオロミア州担当者より提案され、プロジェクトマネージャーにより了解されました。移牧混合型の生計様式を考慮したAPZ・活動対象県については、安全面を含む今後の現地情勢の動向も踏まえて協議を継続することにしています。

プロジェクトでは、残り1つのAPZ選定とあわせて、一連のAPZの評価・選定からパイロット郡の選定に至るまで、オロミア州担当者が一貫して対応できるよう活動を継続します。また、これにより、そのノウハウが他州でも実践できるように支援していきます。

【画像】図:エチオピア国内のAPZの分布状況
(出所:エチオピア政府「気候変動レジリエンス・グリーンエコノミー(CRGE)農林業分野戦略文書」(2015年刊行))

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会議の様子