【トンガ】島嶼国における遠隔医療の課題に貢献する能力強化の取り組み

2022年1月14日

トンガでは、2021年8月末より始めた準備会合や病院側との定例会を実施しつつ、プロジェクト活動を展開しています。本プロジェクトの対象となっているバイオラ病院は、トンガの首都ヌクアロファに位置し、島々から成るトンガ王国の医療を支えている主要病院の一つです。プロジェクト活動の一環として、同病院の医療従事者(医師・看護師)を主な対象としたリアルタイムオンライン研修を、10月1日~11月19日までの間実施しました。

この研修では、バイオラ病院の医師グループと日本人医師、同病院の看護師グループと日本人看護師が、ほぼ毎週、同じ曜日・時間にオンラインで一同に介して1時間ずつの研修を行うというもので、振り返りセッションを含む8回で構成されています。主に集中治療を専門としない医師・看護師を対象に、新型コロナ感染症や感染症患者の治療やケアについて扱い、医師の場合は、心拍停止症候群や敗血症、人工呼吸器の基礎、新型コロナウイルス感染症患者の治療や感染対策等について、そして、看護師向けには、重症患者のモニタリング、身体的アセスメントの他、集中治療後症候群のケア、新型コロナ患者の呼吸ケアや家族のケアを主なテーマとしています。各研修セッションでは、まずデジタル教材を用いた基礎的な講義を行った後、質疑応答形式で、それぞれ日本人医師や看護師による技術指導や助言、文献の確認や提案、参加者から出される日々の疑問について意見交換等を行いました。

この一連の研修を経て、11月26日には、リモートカンファレンスを実施。バイオラ病院の医師グループ及び看護師グループによるプレゼンテーションをもとに、病院内の過去の症例を通じて、それぞれの立場から日々の課題や問題点を振り返りつつ、日本人医師や看護師側に課題や対策を発表してもらいました。これらの活動において病院側の関係者との取り纏めや準備を担った医師は「これまで日々の治療やケアについて振り返る機会自体がなかったが、本プロジェクトの活動は、多くの参加者にとって新鮮な経験となり、各々のモチベーションの向上にも繋がったのではないか」と述べました。また、トンガでは集中治療を専門としていない医療従事者が限られた人材や物資の中で、実際の治療やケアに当たらなくてはならないため、今般の取り組みで様々な医師や看護師が一堂に会し知識や課題を共有出来たことは、大きな糧となったとの声もありました。

バイオラ病院では、医師のいない離島の保健所に医療従事者を派遣する他、逆に離島で専門医の診断や治療を要する患者が出た場合には、離島の保健所の医師がバイオラ病院に電話をして判断を仰いだり、搬送や専門医の出張派遣を依頼したりすることがあります。そのため本プロジェクトの活動を通して、トンガ国内の遠隔医療や集中治療の在り方等に対して、広く参考とされることが期待されています。

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