インドネシア向け技術協力プロジェクト討議議事録の改訂:新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト(追加コンポーネント)

2022年8月3日

国際協力機構(JICA)は2022年8月3日、ジャカルタにて教育文化研究技術省(MoECRT)との間で、実施中の「新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト」に関して、活動内容や期間などの追加を合意する討議議事録(Record of Discussion)に署名しました。

JICAは2021年秋から、COVID-19をはじめとする重症患者のための集中治療分野の能力強化にかかる技術協力を10か国以上で展開しています。インドネシアでは、ジャカルタにあるインドネシア大学病院、マカッサル市のハサヌディン大学病院を対象に、日本とインドネシア間で集中治療に従事する医師・看護師を遠隔でつなぎ、集中治療医療に係る研修及び遠隔での診療検討会を通じた技術的助言を行い、医療従事者の能力強化を図ってきました。このたび、先行プロジェクトの成果を踏まえたインドネシア政府及び両病院からの要望を受け、追加コンポーネントを実施する運びとなりました。

両病院は、それぞれジャカルタ首都圏・インドネシア東部地域の中核病院となっており、各地域病院における医療従事者の教育機関としての役割も担っていることから、本追加コンポーネントでは、両病院を拠点とし、両地域に所在する関連医療機関へ面的展開を行います。実施中の技術協力に、18ヵ月間を追加し、両大学病院に加えて地域の関連医療機関を対象に、国内の医療機関間での遠隔医療(遠隔診療補助及び遠隔教育)の仕組みを試行・構築し、さらに同国内の医療データ連携を推進することで、大学病院を中心とした離島・地方部を含む地域保健医療の拡充と質の強化を目指します。なお、インドネシア大学病院では引き続き集中治療分野で実施する一方、ハサヌディン大学病院では産婦人科・眼科等の他分野へ拡大する予定です。対象病院にとっても遠隔医療活用は新たな試みであるため、本協力を通じて得られた経験や知見をインドネシア政府の関係省庁に共有し、遠隔医療活用に向けた協議を通じて政策提言も行います。

本追加コンポーネントは先行プロジェクトと同様に、医療システム強化に資するものであり、インドネシアの保健医療支援ニーズ並びに我が国及びJICAの協力方針に合致し、SDGsゴール3(健康な生活の確保、万人の福祉の促進)、及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に貢献します。

追加コンポーネント詳細は次の通りです。

国名 インドネシア共和国
案件名 新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト(追加コンポーネント)
プロジェクトサイト/対象地域名
  • 西ジャワ州インドネシア大学病院(Rumah Sakit Universitas Indonesia)、及び同病院のリファラル傘下の医療施設
  • 南スラウェシ州ハサヌディン大学病院(Rumah Sakit Universitas Hasanuddin)、及び同病院関連の医療施設
事業実施期間 2022年10月~2024年4月(約18ヵ月)
事業実施体制
  • 監督省庁:教育文化研究技術省
  • 関連省庁:保健省
  • カウンターパート病院:インドネシア大学病院、ハサヌディン大学病院
  • パートナー病院:両病院リファラル傘下ないし関連医療施設
  • カウンターパート病院とパートナー病院を合わせて対象病院と呼ぶ。
上位目標 インドネシア国の大学病院において、医療従事者間での遠隔医療体制を構築することで、大学病院を中心とした離島・地方部を含む地域保健医療の拡充と質の強化を図り、もってユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に貢献する。
プロジェクト目標 遠隔地を含む地域医療の拡充と質の改善を担うカウンターパート病院の役割が、パートナー病院との大学病院を中心とする遠隔医療の仕組みを通じて強化される。
成果 成果1:対象病院間での遠隔医療(遠隔診療補助及び遠隔教育)が計画、導入される。
成果2:カウンターパート病院の遠隔医療提供能力と、パートナー病院の医療サービス提供能力の強化が検証される。
成果3:検証された大学病院を中心とする遠隔医療の仕組みのカウンターパート病院内及び他大学病院への横展開が検討される。
成果4:医療従事者間の遠隔医療主流化にかかる課題や可能性が、関連政策策定やデータ連携管理のためにインドネシア政府等の関係者に広く共有される。
活動 活動1-1:パイロット活動の実施計画を策定する。
活動1-2:対象病院に対して、遠隔医療システム及び機器を導入し、遠隔医療実施に係る研修を実施する。
活動1-3:対象病院でパイロット活動を実施する。
活動1-4:パイロット活動の結果を基に本格活動の実施計画を策定する。
活動1-5:より多くのパートナー病院を巻き込んだ本格活動を実施する。
活動2-1:定量化可能な指標による遠隔医療のモニタリング・評価手法を開発する。
活動2-2:カウンターパート病院の医療従事者の遠隔診療と遠隔教育に係る能力改善を測定する。
活動2-3:パートナー病院の医療従事者の患者に対する医療サービス提供に係る能力改善を測定する。
活動2-4:遠隔医療実施に係る継続的なモニタリング・評価サイクルを対象病院における通常業務として組み込む。
活動3-1:大学病院を中心とした遠隔医療の仕組みの好事例や教訓を整理する。
活動3-2:大学病院を中心とした遠隔医療の普及について、カウンターパート病院、関係省庁、他大学病院、民間ヘルステック企業と協議する。
活動4-1:遠隔医療活動を通じてカウンターパート病院及び再委託先の民間企業が取得した医療データをIHSプラットフォーム(インドネシア政府保健省が主導する保健医療セクターのデータ連携基盤)に接続する。
活動4-2:プロジェクト活動を通じて特定された遠隔医療に係る政策や規制に対する教訓が整理される。
活動4-3:診療報酬制度やデータ連携を含む遠隔医療主流化に係る政策提言を、関係省庁と協議する。
投入 【日本側投入】
  • 専門家
  • 遠隔医療技術を有する民間企業のサービスやソリューション(遠隔医療に必要な医療機器の投入含む)
  • 研修員受入
【インドネシア側投入】
  • カウンターパート人材の配置
  • 案件実施のための医療施設・インフラ・医療資機材の提供、実施後の運営維持管理費

活動現場での写真

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署名の様子(教育文化研究技術省)

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署名の様子(JICAインドネシア事務所)