第26学校における特別学級開設に向けた活動−誰もが地域の学校で学ぶことを目指して−

2016年8月3日

モンゴルの首都、ウランバートル市ハンウール区に第26学校があります。市の中心から約35キロ離れた郊外に位置する、児童生徒数570人、教員数34人(2016年3月時点)の小規模な学校です。

第26学校周辺で生活している障害のある子どもたちの一部は、最も近い特別学校(第63特別学校)に通っています。しかし、第63特別学校までは約23キロあり、バスの本数も十分とは言えません。特に自力で歩行できない子どもたちにとっては、物理的アクセスが大きな壁となり、だんだんと通学が困難になってドロップアウトしてしまうという問題が生じています。第26学校でも障害のある子どもを通常学級で受け入れていますが、重度の子どもたちや一度ドロップアウトしてしまった子どもたちは通常学級での学習活動が難しい、加配教員を配置することができないなどの課題があります。

2014年から2015年にかけて、第26学校に産休代替として勤めていた女性教員が、同校のソーシャルワーカーとともに、学校周辺に住む障害のある子どもたちの実態を調査しました。その結果、学校に通うことができず、在宅となっている子ども(6歳〜18歳)が9人いることが判明しました。本人や保護者から「地域の学校に通いたい、通わせたい」という声が多く聞かれたことから、教員たちは特別学級開設を模索し始めました。そんな折、第26学校が本プロジェクトのパイロット校として選定されました。教員たちの希望を受け、プロジェクトは特別学級開設を支援することになりました。

2015年12月20日、まずは障害のある子どもたちに学校の様子を知ってもらおうと、4人の障害のある子どもたちとその保護者、そして第26学校の児童の一部とともにクリスマス会を開催しました。クリスマス会では、児童による笛の演奏を聴いたり、皆で一緒にゲームなどを楽しむことができました。

その後、学校、保護者、プロジェクト間でさらなる協議を重ね、2016年3月より、月2回、障害のある子どもたちを対象とした特別授業を行うことになりました。行政が正式に認めた学級による活動ではないので、様々な課題もありました。例えば、子どもたちの交通手段や給食、教材費などです。中心メンバーとなったソーシャルワーカーと女性教員は様々な方面に働きかけ、これら一つ一つを解決していきました。特別授業に参加する子どもたちも、スクールバスを利用できることになりました。また、第26学校に給食を納入している会社からは、必要な食数が無料で追加されることになりました。さらに、近隣で活動する韓国のNGOからは、子どもたちが学校で使用するタオルや歯ブラシなどが寄贈されました。本プロジェクトは、教材や文房具、子どもたちの活動記録用のファイルなどを支援しました。

学年末である2016年6月までに、色と形や数字をテーマにした計6回の授業が行われました。授業には平均して5人の子どもたちが参加しました。授業には簡単な髪留めの製作や工作なども取り入れられ、参加した子どもたちは楽しみながら学ぶことができました。保護者からは、教員たちに対する感謝とともに、これからも継続して学校に通わせたいとの要望があり、第26学校の管理職らは特別学級開設について検討を重ねました。

その結果、新学年が始まる2016年9月より特別学級を本格的に開設することを同校として決定し、現在、教育省及びウランバートル市教育局に申請中です。申請が許可されれば、教員が加配され、子どもたちのための予算も配賦されるようになります。障害のある子どもたちが少しでも教育の機会を得られるよう、プロジェクトはこれからも支援を続けていきます。

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給食の時間

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色や形の勉強をしながら、花の切り絵を制作

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髪留めの製作

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完成した髪留め