マンスリーレポート(2017年1月号)

2017年1月31日

2016年12月、ニジェールに「みんなの学校プロジェクト」が戻ってきました。2020年4月まで3年4か月実施されます。
2004年に開始されたニジェールのみんなの学校プロジェクトは、その第1、第2フェーズで住民参加による教育改善へ向けた取り組みを支援し、ニジェールにおける教育へのアクセス改善に貢献してきました。その成果を背景に、行政の支援を受けつつ、さらに住民が教育開発、特に「教育の質」の改善にも貢献できるような支援を行ってきたのが、2016年5月に終了した「みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクト」です。
本プロジェクトでは、前フェーズで開発に取り組みで成果を上げた「初等教育における児童の基礎学力向上のための教育開発モデル(質のミニマムパッケージ)」と「中等前期教育における機能する学校運営委員会モデル」の二つのモデルを発展、拡大、普及することによって、ニジェールの基礎教育のアクセスと質の改善への貢献を目指します。
ではなぜ、みんなの学校プロジェクトが質の向上モデルの開発を目指したのかー、その最大の理由は、住民、保護者に根強い学習の質改善ニーズがあったことです。そのニーズがあることは、2004年にみんなの学校プロジェクトが始まった頃から明らかでした。学校活動計画の中で、教科書や副教材、文房具の購入、教員の研修参加支援など、学習の質の改善にかかる多くの活動が実施されていたからです。その当時から、それらの活動で成果がでないことを知って、学習の質の改善できるように住民を支援したかったのですが、やり方がわかりませんでした。
別の理由は、プロジェクトがニジェールの「学習の危機」という状況に直面したことです。UNESCOの統計でも、仏語圏アフリ力初等教育の質に関する共通学力テスト(PASEC)でも、ニジェールの学習の質は低いことは知識として知っていました。しかし、ニジェールの「学習の危機」を実感したのは、プロジェクトで実施した算数の簡単な実力テストで、ニジェールの児童の学力信じられないくらい低いこと知ったときです。
壊滅的な学習の質の低さに直面し、ショックを受けながら、なんとかして、親や住民のニーズに今すぐ応えようと考えたのが「質のミニマムパッケージ(算数)」でした。開発に時間がかかりましたが、このモデルは、驚異的な結果を生み出しました。パイロット校の1万人以上に対する児童への試行で、事前、事後、実力テストの正答率が5割改善したのです。このモデルは、住民に支援された校外補習補習の中で、児童が自学自習できる算数ドリルを学習するという単純な構成ですが、この抜群の成果が、ティラベリ州モデル普及に結びつきました。教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)の資金使ったこの普及により、3500校の35万人の児童が裨益します。さらに、この普及でも成果を出せれば、さらなる普及資金が提供され、もっと多くの子どもたちが算数の学力を改善する機会を得る可能性が高まります。
さらにこのフェーズで、読み書き能力改善のモデルを開発します。このモデルが成功すれば、すでに開発された「算数」に加え「読み書き」能力を困難な状況の中でも改善できる統合基礎学力統合モデルとなり、アフリカの「学習の危機」の処方箋の一部を提供したことになると思います。
今後もモデルの成果をより広く発信し、世界的な評価を受け、ニジェールへの開発資金が世界から集まるように努力していこうと思います。