マンスリーレポート(2017年7月号)

2017年7月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することで児童の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』に、いままでの算数に加えて読み書き要素を入れ込む『質のミニマムパッケージ算数・読み書き統合型モデル』開発に取り組んでいます。
現在ニジェールをはじめとしたアフリカの国々の生徒は「Learning Crisis」と言われる厳しい状態に直面しています。アフリカでは、在学しても読み書き計算といった基礎能力を付けることができず、6割の児童が学校を離れることをUCESCOが報告しています。そしてこの状態を学習の危機と呼びました。この危機という言葉には、もはや改革だけでは落ちこぼれてしまう生徒には支援は届かないということを示しています。食糧危機では、緊急支援をしなければ、多くの子どもたちが餓死してしまう可能性があります。今の学習の危機に対して緊急支援をしなければ、落ちこぼれる多数の児童は、読み書き計算といった生きていく上で最低限の能力を獲得する機会を失ってしまうのです。
ニジェールの危機的状況を救う緊急支援としてみんなの学校(EPT)プロジェクトが作ったのが、「質のミニマムパッケージ(算数)」です。このモデルは、学校の状態が現在の状態(質の低い教員、教材不足、劣悪な環境、学習時間の不足)でも、住民の支援により基礎学力を獲得できるように設計されています。パイロット段階にあげた驚異的な成果が認められ、教育のためのグローバルパートナーシップ資金による「質の教育プロジェクト(PAEQ)」で、このモデルがニジェールのティラベリ州全校(約3519校)で、実施されることになりました。この学習の危機に対して緊急支援ともいえる革新的な方法にお金が付いたことが奇跡なのですが、現在のところPAEQの手続きの遅れにより、一年以上も実施が延びています。
質のミニマムパッケージは優れたモデルですが、緊急支援モデルとしては、さらに改善の余地があります。特に読み書き手法には改善の余地があります。それを改善するために、優れた手法がないかとそこで世界を見まわして探した結果行きついたのが、PrahtamというインドのNGOが開発したLearning Campという手法でした。Learning Campsとは、40日間の集中学習で、文字しか読めなかった子どもたちのほとんどが、文章を読めるようになるという驚異的な成果を出しており、成果はインパクト評価でも認められ、現在では、年間予算30億USドル、常勤スタッフ6000人の巨大NGOに成長しました。
このNGOは、Pratham Education Fondationといい、1994年にムンバイで、ごく小さな組織として生まれました。すべての子どもが、読み書きができるようにするということを組織の明確な目標としてかかげ、実際に支援が子どもの手に届き、それが着実に成果になることを追い求めてきたNGOです。活動としては、まず、その当時、巨大スラムを抱えるムンバイという都市でコミュニティー幼稚園を数年で3000も作り出すという成功をします。この成功を皮切りに、まったく学べない子どもたちが読み書き計算能力を短期間に獲得できるようなモデルを作り、改善を続け、そのモデルがアメリカのインパクト調査を実施する研究者によって評価され、世界的評価と年間3000億円の活動実施資金を獲得するようになりました。近年では、Learning Campのおかげで、読み書きができなかった数百万人の児童が読み書きできるようになっています。
今回、このPrathamとみんなの学校は、技術交換を目的とした経験共有セミナーを7月18日から26日にインドで開催し、ニジェールからも、カウンタパート3名と専門家が参加しました。そこで出会ったのは、圧倒的な成果を誇る手法だけでなく、目的を達成するための、常に手法の改善を目指す強い意志とそれを実際に実現していく効率的な組織でした。今後ニジェールにおいても、インドでの学びを活かし、質のミニマムパッケージモデルの改善にさらに取り組んでいきます。

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インドNGO Pratham活動風景

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インドNGO Pratham介入村落住民集会視察