マンスリーレポート(2017年8月号)

2017年8月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することで児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組んでいます。
その布石となる前フェーズでは、算数ドリルを活用する「質のミニマムパッケージ・算数」の開発・実証に取り組みましたが、教育省ならびに世界銀行によりその成果が高く評価され、世銀が管理する「教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)」による資金支援の教育省実施「質の教育支援プロジェクト(PAEQ)」にて、約3500校へ導入されることとなり、現在その準備活動が進められています。
そのような中、「質の教育支援プロジェクト(PAEQ)」の支援ドナーであるGPE、世銀、フランス開発庁などが、活動の進捗確認および今後の展望を検討するための中間評価ミッションを7〜8月にかけて実施しました。質のミニマムパッケージ関連では、算数ドリルの調達手続きの問題により、残念ながら、その普及に大幅な遅延が生じていますが、調査団からは「質のミニマムパッケージ・算数」普及効果への大きな期待に基づき、調達プロセスの改善が教育省およびニジェール国側に強く求められました。その一方、プロジェクトが現在取り組んでいる「質のミニマムパッケージ・読み書き」の成果が、PAEQ活動関連事項として世銀等の調査団メンバーに共有され、非常に高い評価を得ました。調査団は今回の調査結果として、「質の教育支援プロジェクト(PAEQ)」の9カ月延長を提案していますが、その理由の一つとして「質のミニマムパッケージ」の期待し得る効果に言及しつつ、その成果を確実化し、より広い範囲に裨益させることを挙げています。世銀をはじめとするミッション団の公式な調査報告において、質のミニマムパッケージ読み書きの成果が共有され、かつ「質の教育支援プロジェクト(PAEQ)」での展開への期待と今後の拡大に言及されたことは、今後、質のミニマムパッケージ活動を拡大展開していく上で、非常に重要です。
その他、前フェーズのみんなの学校にて開発した「学校補助金有効活用モデル」も、この世銀・GPEが支援する「質の教育支援プロジェクト(PAEQ)」にて、3000校への導入が進められています(現在約2000校への導入済み)。今回の世銀・GPE等による中間評価ミッションに先立ち実施された外部機関による会計監査では、「全般的に非常によく管理されており、大きな問題は見当たらない」との報告が上がり、世銀をはじめとするミッション団へと共有されました。特に、問題として指摘されたのは、補助金の中央から学校への資金フローにかかる問題であり、学校レベルでの管理では、学校運営委員会を中心とした管理の適切さが評価されました。今まで試験的にニジェールの学校に導入されてきた数々の「学校補助金」が、不正や管理の独占・管理の不透明さ、証憑書類・管理文書の欠如、使用用途の不明確さ、実質的効果のなさ等々、挙げればきりがないほどに問題が指摘されてきたことに鑑みると、この評価は画期的であり、透明性の高い補助金管理と有効な活用を目指したプロジェクト開発の「学校補助金有効活用モデル」の有効性を示したものと言えます。
このように、みんなの学校は、常に、他ドナー、特に世銀との有効な連携により、モデルの拡大・普及を図り、ニジェールの教育開発へのインパクトを最大化し、その発展に大きく貢献してきました。2004年開始の初期みんなの学校が開発した「機能する学校運営委員会モデル」が世銀の資金によりニジェール全国約1万校に普及されたことは、その最たるものです。質のミニマムパッケージ(読み書き・算数)は今後もそのニーズが高く、教育省のみならず、世銀等からもその拡大・展開による効果が期待されています。今後も、ニジェールの教育開発と成果の最大化のために、モデルの精度を高めるとともに、その成果を発信し、他ドナーとの有効な連携を進めていくよう努めていきます。

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前フェーズパイロット活動での算数ドリル活用「質のミニマムパッケージ・算数」の様子

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「質のミニマムパッケージ・読み書き」活動の様子