マンスリーレポート(2018年3月号)

2018年4月1日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマム・パッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

「初等教育分野」では、いよいよグローバルパートナーシップ(GPE)の支援によるティラベリ州全校への「質のミニマムパッケージ・算数ドリル活動」普及が開始しました。これによりティラベリ州内3500校の児童32万名がコミュニティ・教員の支援を受けて、JICA/プロジェクト開発の算数ドリル活動に取り組みます。

この活動開始に先立ち、プロジェクト支援による「質のミニマムパッケージ普及キックオフセミナー」を開催しました。州内の学校運営委員会(CGDES)連合代表、州・県教育事務所長、視学官、CGDES監督官、指導主事、市長など州内の教育分野関係者、総勢約180名が一堂に会し、ティラベリ州の質のミニマムパッケージ普及の成功とそれによる児童の学力向上に向けて、一丸となって活動することを宣言しました。討議を通して、CGDES連合はティラベリ州内全校で質のミニマムパッケージ・算数ドリル活動を週10時間以上実施すること、教育行政官はその活動をモニタリング支援していくこと、市長はCGDES連合と連携し校外学習活動推進を支援していくこと等を誓い合い、ティラベリ州の教育開発へ向けて、学年度末の算数テストの結果を30%上昇させる目標を掲げました。これらの宣言は、その場限りの宣言に留まりません。当セミナーに参加したCGDES連合の代表者がそれぞれの地域で、セミナーの内容を報告するための連合総会を開き、セミナーにて定めた宣言や目標の内容を総会に出席した各CGDESの代表者に伝えます。さらに各CGDESの代表者は、それぞれの学校に戻って住民集会を開き、住民や教員にこれらの内容を伝えます。住民、教員がこの誓約に合意すれば、目標達成に向けての活動が各校にて実際に行われることになります。そして、市長や視学官など、その他のアクターたちは、これら教員と住民の活動を様々な形で支援していきます。まさに、今回のキックオフセミナーを通して、ティラベリ3500校の児童32万名の学力向上のために、住民、教員を中心とした関係者が努力し、行動する体制が整ったのです。

今回のティラベリ州への「質のミニマムパッケージ」の普及は、深刻化するニジェールの「学習の危機」に対して、初めて行われる大規模な挑戦です。今後、ニジェールがこの危機に対する「戦い」に勝ち抜けるかどうかを見据えるための一つの試金石になり得るかもしれません。

一方の「中等教育分野」では、昨年度から開始した「機能する中等COGESモデル」普及にかかる一連の研修が終了し、対象州中9割の学校でCOGESが設立され、COGES連合も8割を超える31連合が民主的選挙を経て設置されました。そこで、今までの活動の総括と今後の活動戦略協議のための中等COGES監督官会議を対象各州にて開催しました。なお、今回の会議においては、中等COGES監督官が今後COGES連合のモニタリングを実施する上で必要な能力を強化するため、モニタリング場面のシミュレーションとケーススタディを盛り込んだ能力強化研修を行いました。今後、立ち上げ時期を過ぎたCOGESならびにCOGES連合が、住民ニーズと教育開発に貢献する活動を継続的に実施できるよう、モニタリング面の強化を図っていきます。

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質のミニマムパッケージ・算数普及キックオフセミナーでの討議の様子

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中等COGES監督官会議での能力強化研修の様子(グループワーク)

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質のミニマムパッケージ・算数ドリル活動実施風景