マンスリーレポート(2018年7月号)

2018年8月1日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマム・パッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

この7月「初等教育分野」関連活動では、児童の読み書き計算といった基礎学力向上の分野において、世界的に大きな実績をもつインドのNGO Pratham(プラサム)から2名の講師を招聘し、プラサムのTeaching at the Right Level(TaRL)-習熟度別の学習手法を学ぶための中央講師育成研修ワークショップを開催しました。今回のワークショップでは、現在プロジェクトが取り組む「質のミニマムパッケージ」の改善モデル開発と普及にかかわる教育省中央・地方(州・県)の関係者約20名を参加者として絞り込み、来年度以降の「質のミニマムパッケージ」のモデル改善に繋げると共に、ニジェール国内でのプラサム式TaRL手法を推進する将来の中央講師を育成することを目的としました。

プラサムが取り組むのは、いわゆる先生が児童に知識を与えるという形の“授業”ではなく、児童の“能動的な学習”を促す様々な「活動」の組み合わせに児童が取り組むことで、読み書き計算能力を集中的に身に着けていくというものです。初めの8日間は、プラサム講師の指導により組み入れるべき「活動」の内容を講師・参加者間での実践を交えて学び、それに続く7日間は、学校現場にて、実際に子どもたちを相手に参加者がプラサムのアプローチによる活動を実践しました。特にこの実践期間は、参加者が実践を通して手法を身に着けるという意味だけではなく、未来の教員研修“講師”として、今後現場で教員が面することが予想される様々な事態を体感し、今後の指導の糧とするためのものです。

参加者は“元教員”や現役“視学官”“指導主事”といったいわゆる“教育専門家”であり、今まで身に着けた教育理論、カリキュラム知識などに、いずれも一家言ある面々でしたが、「教員は子どもに教えるのではなく、子どもが自ら学ぶのをサポートする」というこの“新たな”取り組みに対し、参加者のモチベーション、学びへの意欲と真摯な取り組み、そして実践力の高さは、「今までのアフリカ各国での研修の中でも一番の部類」とプラサム講師が太鼓判を押すほどで、非常に中身の濃い研修となりました。朝から晩まで連日続く2週間の研修の中で、疲労困憊の様相ながら、まさに“老体に鞭打ちつつ”、プラサム講師の一語一語を一言も漏らさないようにと真剣に取り組む姿は、参加者の意識の高さを示すのみならず、参加者をそこまで魅了するこのアプローチの魅力・効果を示しているといえます。

さらに、なんといっても現場での児童の嬉々として学ぶ姿や進歩の速さには参加者一同舌を巻くほどです。「今日の3時間で、すでに子どもの進歩が見えた!」と参加者が興奮気味に語る通り、子どもの“聞く、話す、観察する、行う、読む、書く”といった能力を高める様々な活動を組み合わせることで、初日の学力テストにて一桁の数字も認識出来なかったり、単語を何とか読める程度であった子どもたちが、数日後には二桁の数字の計算に取り組んだり、短文を読めるようになるなど、驚くべき変化を見せています。子どもの力はそれを引き出す仕掛けがあれば、大人の想像や理論を悠々飛び越えて広がるものだと改めて実感しました。

これらの学びから、当プロジェクトが取り組む「質のミニマムパッケージ」がさらにパワーアップし、ニジェール全土の子どもたちの基礎学力改善へと貢献することが期待されます。

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プラサム研修の様子:プラサム式の活動手法に従い、講師も参加者も全員床に座って研修を受けました。

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プラサム現場実践の様子(1・2年生クラス):8コマの絵をもとに語られる物語に真剣に耳を傾けるこどもたち。