マンスリーレポート(2018年10月号)

2018年10月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。
折り返し地点を過ぎ、プロジェクト後半期の活動を開始した今月10月、「初等教育分野」においては、学力テストの点数が実施後30~40ポイントも上昇するという大きな結果を生み出した、昨年度のティラベリ州全3500校への「質のミニマムパッケージ・算数」普及の経験を蓄積するため、保護者、教員、児童など現場アクターへの聞き取りを行いました。非常に短い期間の実施でありながら、皆が子どもたちの変化、学習効果を口々に挙げています。

「今まで子どもが勉強の話をしているところなんて目にしたことなかったけど、ドリルをやり始めてから、子ども同士で“こうやるんだ”“これは間違ってる”と色々言いあってるのを耳にするようになったよ。何よりも子どもが“勉強する”ようになったね。」-と保護者Aさん。

「授業でカバーできない内容が含まれる質のミニマムパッケージの算数ドリルで、子どもたちみんな、全然できなかった子も含めて、本当に算数ができるようになった。そのおかげで随分と授業がやりやすくなったわ。それに子どもたちは算数ドリルが大好きだしね。今では授業を早く終えてドリルをやろうって子どもたちが急かしてくるのよ。」-と教員Mさん。

「算数は苦手だったけど、質のミニマムパッケージのドリルをやるようになってから、算数がわかるようになったから、今は算数が好き。」「勉強ができるようになるから算数ドリル大好き!先生や中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんが教えてくれて、できないとやり直しをしなくちゃいけないんだけど、できると花丸くれるんだよ。」-と5年生のIくんと2年生のRちゃん。

子どもが学力をつけることを強く望みながらも、“無学の自分には勉強のことはよくわからない”とどこか子どもの学習から一歩引いていた保護者にとって、今まで“見えなかった”子どもの学習が“目に見える”“実感できる”ようになったのは大きな変化です。学習の実施や成果が見えることで、「(学校に行っていない自分には)勉強を教えられないけど、子どもが毎日学校や放課後の夜間学習にきちんと出るよう、いつも気を付けているよ。」とそれぞれの親が子どもの学習に関心を示し、自分たちでできる学習サポートを始めています。また、“勉強ができないのはその子の資質の問題”と時に考えがちであった先生たちにとっても、適切なサポートをしさえすれば、“どの子もやればできる”ということを実感し、普段の授業への効果も感じ始めています。そして、子どもたちは、質のミニマムパッケージの活動を通して、算数の問題ができるようになっただけではなく、「学ぶ喜び・楽しさ」を知る機会ともなったようです。
大きな結果を生んだ「質のミニマムパッケージ・算数」の普及ですが、現時点では、資金の問題もあり今後の継続・他地域への拡大等の目途はついていないものの、一人でも多くのニジェールの子どもたちがこの裨益を受けられるよう、プロジェクトとしても教育省・ドナー等への働きかけを強めていきます。

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質のミニマムパッケージに関する保護者聞き取りの様子

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質のミニマムパッケージに関する教員聞き取りの様子

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質のミニマムパッケージに関する児童聞き取りの様子