マンスリーレポート(2019年6月号)

2019年6月30日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

「初等教育分野」では、児童の能動的な習熟度別学習法(Teaching at the Right Level:TaRL)と算数ドリルを組み合わせた「質のミニマムパッケージ」読み書き・算数活動が、対象101校の1年生から6年生約13000名の児童を対象に今年度実施されました。2月に開始したこの活動ですが、開始後3カ月半後となる学年度末の6月に、児童の学力状況の伸びを測るエンドライン学力テストを実施しました。この3カ月半もの間、各学校では週10時間の校外学習が住民支援で行われ、読み書き・算数それぞれ平均70~80時間の活動(計140~160時間)に結びつきました。その結果はというと、すべての学年で、読み書き・算数ともに大きな改善が見られるという非常に喜ばしいものでした。

読み書きにおいては、当初1年生の1%しかアルファベット文字を読める子はいませんでしたが、3か月半後にはその数はなんとほぼ4割にまで上昇しました。2年生ではその数は6割を超え、そのうちの25%が単語が読めるようになりました。また、当初、3~4年生で簡単な文を読める子は1割、5~6年生でも3割弱でしたが、今回その割合はそれぞれ約3割、5割以上まで改善しました。そして文字すら読めなかった子の割合は大幅に減少しています。

【画像】枠内:文字・単語が読める児童の割合

【画像】枠内:文字・単語が読める児童の割合

算数においても、特に数が読めない児童が大半であった1~2年生も、1桁、2桁など、8割・9割型の児童が数字を認識できるようになりました。また、繰り上がりや繰り下がりなどの問題を含む四則計算問題で合格点に達する子どもの割合が、各学年平均30%以上上昇するなど、計算力も向上しています。

【画像】枠内:1桁以上の数が読める児童の割合

【画像】合格点以上の児童割合(左:ベースライン、中央:ミッドライン、右:エンドライン)

【画像】グラフ下部:四則計算別「計算ができる3~6年児童の割合」

ある学校では、住民集会でエンドラインの学力テスト結果を発表したところ、その結果に歓喜した住民、保護者たちによって、集会が“お祭り”と化したそうです。教員、保護者、住民全体でつかんだ成果だからこそ、その喜びもひとしおだったのでしょう。

プロジェクトとしても、ポジティブな結果に胸をなでおろしてはいますが、容易くはない「質のミニマムパッケージ」活動に注力する住民たちの努力と期待に応えられるよう、今年度の結果を分析し、今後のモデルのさらなる改善へと進めていきます。

【画像】

「質のミニマムパッケージ」算数TaRL活動の様子