マンスリーレポート(2019年7月号)

2019年7月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

「初等教育分野」では、今年度、101校の1年生から6年生約13,000名の児童を対象に、児童の能動的な習熟度別学習法(Teaching at the Right Level:TaRL)と算数ドリルを組み合わせた「質のミニマムパッケージ」読み書き・算数活動を、3か月半にわたり実施しました。その活動内容や成果を他州関係者に広め、今後、教育省と共に、より多くの児童が質のミニマムパッケージの裨益を得られるよう協議するため、『質のミニマムパッケージモデル経験共有セミナー』を行いました。また、今回のセミナーでは、「質のミニマムパッケージ」活動の基盤である“機能する学校運営委員会”および“学校運営委員会連合”の今年度の活動結果の評価も同時に行いました。その結果、全国20,000ある初等学校運営委員会の9割以上が機能的に活動を計画、実施していることが確認されました。いずれの学校運営委員会も年間平均5活動以上を実施し、そのうちの7割が児童の学習改善を目指す補習や夜間学習を行い、年間200時間近くもの学習時間増加に貢献しています。

中等においてはまさに現在、“機能する学校運営委員会”モデルの普及に取り組んでいますが、初等においては、“機能する学校運営委員会”および“連合”モデルの普及からすでに10年以上が経過しています。それにもかかわらず、9割以上の学校運営委員会が毎年計画的に活動を実施し、毎年全国で5億円以上の資金を動員し、全国児童の40%を収容するにあたる2万にも及ぶ仮設教室を建設し、補習や夜間学習を通した児童の学習支援に継続的に取り組む状況からは、まさに教育への住民参加と学校運営委員会が、ニジェールの全国各地のコミュニティにしっかりと浸透していることがわかります。しかもその情報が、限られたモニタリングや行政サポートの中、確実に中央にまで上がってくるネットワークがあるという点は、他国と比べても非常に稀有な状況です。このコミュニティの力と学校運営委員会のネットワークこそ、ニジェールの厳しい環境の中で、子どもたちの教育を前進させる“おおいなる力”となると思われます。プロジェクトでは、その“力”を最大限に生かすようサポートし、より効果的な「質のミニマムパッケージ」モデルの拡大と普及を通して、ニジェールの子どもたちの学力向上へと繋げていけるよう引き続き取り組んでいきます。

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「質のミニマムパッケージ経験共有セミナー」での活動のデモンストレーション(算数活動)様子

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「質のミニマムパッケージ経験共有セミナー」での活動のデモンストレーション(読み書き活動)様子