マンスリーレポート(2019年8月号)

2019年8月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

今月「中等教育分野」では、2018/2019学年度の『中等COGES/COGES連合の経験共有セミナー』を行いました。このセミナーは、今年度、全国中等COGES/COGES連合が年間を通して実施した活動結果を中央・地方関係者と共有・評価するとともに、現場活動にて見受けられた問題の抽出と解決策の検討を行い、来年度の発展方向性を協議することを目的としています。今回のセミナーで結果を共有したのは、プロジェクトが現在介入している4州のみですが、この4州においてはCOGES、COGES連合共に、高く評価できる結果を得ました。まず、4州内に現存する約1000校の中学校中9割程度のCOGESの年間総括表が回収され、中等COGES当たりおよそ9.6活動が実施され、それぞれ87万フランセーファー(約17万円)の資金動員が行われたことが確認されました。これは4州約900校全体でおよそ7億80万フランセーファー(約1億5600万円)に上ります。初等教育における住民動員額は全体で毎年約5億円~6億円であるため、それと合わせると、ニジェールの教育開発への学校運営委員会を通した住民の貢献は全国で少なくとも8億~9億円には上るでしょう。これらの動員の用途は、学校施設・インフラ整備、教材・文房具の購入、授業等で使用する演習問題の複写、定期テストの実施運営費など多岐にわたりますが、プロジェクトでは、質の改善にかかる活動を促進していることから、対象4州では、8割~9割の学校がCOGES支援の補習活動を実施し、主要科目の数学やフランス語においては、各教科あたり60時間の補習が行われたことが報告されています。この補習に関しては、授業についていけないことを理由とした落第・退学率が非常に高い中学校にとって、不可欠な活動といえ、現場の先生や生徒からもその効果が評価されています。

一方の中等COGES連合活動に関しては、新しい試みのため、資金動員や活動成果の問題を抱える中、まだまだ試行錯誤を繰り返しつつ進んでいる感じではありますが、95%以上の中等COGESが連合に加盟しており、連合総会の参加率は平均9割に上るなど、現場関係者の期待は非常に高いです。4州内に37ある中等COGES連合ですが、教育の質への貢献のため、連合と教育行政とが協力しつつ、州や県での統一学力テストをオーガナイズしたり、管轄内の全校に対する教員指導の強化支援をおこなったりと、少しずつ、その存在感を増してきています。

なお、このような高いパフォーマンスがセミナーにて報告された結果、プロジェクト開発の「機能する中等COGES」および「中等COGES連合」モデルの有効性が高く評価され、来学年度にプロジェクトが介入を予定している新規2州の関係者意識が高まったと共に、プロジェクト開発の「中等COGES連合モデル」が国家モデルとして承認され、今後全国普及へと進められることになりました。

今後もプロジェクトでは、初等・中等の「機能する」学校運営委員会体制を強化し、住民参加を通したニジェールの教育開発に貢献していきます。

【画像】

中等COGES支援補習活動実施の様子