マンスリーレポート(2019年12月号)

2019年12月31日

『みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクトフェーズ2』では、初等教育分野と中等教育分野、二つの分野にて活動しています。初等教育分野においては、住民支援の校外学習に効果的なツールを導入することですべての児童の“読み書き”と“計算”の基礎学力改善を目指す『質のミニマムパッケージ』の開発と普及に取り組み、中等教育分野においては、アクセス、格差解消、教育の質の改善など、様々な教育開発課題の改善に貢献する“機能する”学校運営委員会(COGES)モデルの全国普及を進めています。

「中等教育分野」では、2019年9月よりニジェール全土への「機能する中等COGESモデル」普及へ向けた活動を実施しています。まず、10月には、今年度新たにプロジェクトが介入を開始した2州内の公立・私立中学校および中・高併設校、およそ500校に対し、「民主的中等COGES設立」研修を行いました。その結果、研修に参加した100%の学校にて、住民による秘密投票が行われ、見事500の中等COGESが民主的に設立されました。そして、この11月~12月にかけては、住民選挙で選ばれた中等COGES代表、会計および校長と教員代表を対象に、質の改善のための「学校活動計画策定・実施・評価プロセス」、「リソース管理」、「中等COGES連合」の役割と設置の仕方にかかる研修を行いました。両州いずれの研修会場でも、研修受講者による非常に活発な議論と積極的な参加が見られ、まさに、“住民の信任を受けて選ばれた”という自負と“自分たちが今後皆を引っ張って学校を変えていくのだ”という責任感と意気込みが感じられる研修となりました。これらの研修を経た現在は、各学校にて、学校活動計画を策定するための生徒の学力テストの実施やテスト結果をもとにした計画内容の協議・承認のための住民集会が行われています。また、今後2020年1月~2月にかけて、新規2州の各県でおよそ20の中等COGES連合が立ち上がる予定です。2020年も、引き続き、ニジェール全土に広がる「機能する中等COGES」の維持・発展へ向け取り組んでいきます。

一方の「初等教育分野」では、現在、正規授業時間内に質のミニマムパッケージの一部要素を入れ込むモデル開発・試行のパイロット活動に取り組んでいます。初等教育省では、2年前より、全国の小学校にて、新学期の3か月間の授業時間を通常のカリキュラムではなく、読み書き算数の基礎学力向上のために充てる「学力向上プログラム」を実施しています。この教育省のプログラムとプロジェクト開発の「質のミニマムパッケージ」では“児童の現状に合わせた基礎固め”という目的を共有していることから、「学力向上プログラム」に「質のミニマムパッケージ」の要素を融合させる活動モデルを試行することになりました。具体的には、新学期の3か月間、正規授業時間に行われる「学力向上プログラム」の時間割の一部に、「質のミニマムパッケージ」モデルの習熟度別学習(TaRL;Teaching at the Right Level)アプローチ活動を導入し、能動的な児童の学びを通して短期間での基礎学力改善を促進していきます。

現在までベースラインとミッドラインの学力テストが各校にて実施されましたが、わずか1カ月間で読み書き・算数の基礎学力が向上していることが確認されており、2020年1月のエンドラインテストの結果が、今から大いに期待されます。このパイロット活動が大きな一歩となり、全国の小学校で実施されている「学力向上プログラム」とともに、「質のミニマムパッケージ」も全国に広がるよう取り組んでいきます。

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学校活動計画策定研修の様子-校長もCOGES代表も皆が混じって、真剣に議論を戦わせています。

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学力向上プログラム授業時間に質のミニマムパッケージ活動に取り組む児童たち。