2015年、妊産婦死亡率がさらに低下しました

2016年5月31日

プロジェクトでは、コーディレラ地域において母子保健サービスが効果的・効率的に提供されるための保健システム強化を目標にし、2012年より活動しています。そして、その活動成果を計る指標の一つに、妊産婦死亡率を採用してきました。妊産婦死亡率とは、出生10万人に占める妊産婦死亡数のことです。フィリピン国家保健政策では、この指標をミレニアム開発目標達成年にあたる2015年までに52にすることを目標としています。しかしながら2013年時点でフィリピン全体における妊産婦死亡率は120(WHOデータ)と依然高い状況が続いていました。

このような状況に対し、プロジェクトではこの4年間、母子保健サービスを提供する側である医療従事者や地域保健局関係者と、サービスを享受する側の妊産婦やその家族、これら双方に対し様々な活動を実施してきました。例えば、医療施設の機材整備や、これまで分娩施設でなかった町の保健所を分娩施設にするための支援、サービスを提供する医療従事者の技術研修の実施、また妊産婦やその家族に産前産後健診や施設分娩の重要性を伝える啓蒙活動などを展開してきました。加えて、昨年次は妊産婦が緊急時に適切な処置を受けられるよう、緊急時搬送システムの整備に力を入れたり、緊急産科・新生児ケア(Basic Emergency Obstetric and Newborn Care, 通称BEmONC)の認定を受けた医療従事者がその技術や知識を継続し向上できるよう、現地の活動をモニタリングし結果をフィードバックする「サポーティブスーパービジョン」という新しい取り組みを実施しました。

こうした活動が効果的に機能した結果、コーディレラ地域における妊産婦死亡率は2014年に50となり初めて国の目標値を下回りました。さらに2015年には45と、順調に低下を続けています。

コーディレラ地域全体の妊産婦死亡率は改善し続けていますが、母子保健サービスの質や実施の実態には地域により差があります。一方、プロジェクトでは母子保健システム強化にかかる様々なデータを州、町、そして最小行政単位であるバランガイ毎に収集・分析しており、どの地域にどのような問題があるかを把握しています。このデータを用い、各地域の状況に即した助言や活動を実施することで、母子保健サービスにおける地域差解消に取り組んでいきます。さらに、2016年4月から開始した5年次活動では、これまでの活動に加え、妊産婦の緊急搬送システム強化にかかる取り組み地域を拡大し、アブラ州およびマウンテンプロビンス州にある二つの自治体間保健ゾーンを支援します。自治体間保健ゾーンとは、州内の複数の自治体同士で患者搬送ネットワークの構築など保健サービスにかかる協定を結んでいる区間を指しますが、この二つのゾーンは十分に機能していません。従って、プロジェクトではシステム強化に関する研修やマニュアルの策定などを実施する予定です。これらの活動により、さらにコーディレラ地域全体の母子保健システム強化を図ります。

今年次の取り組みの結果、さらなる妊産婦死亡率の低下と、今年次でプロジェクト活動が終了した後も改善傾向が継続されることを目標に、プロジェクトは活動を続けていきます。

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BEmONC認定施設にモニタリング担当者が赴き、助産師が実施する産前健診の様子を観察し、ケアや記録物に対し助言を行っている。

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患者搬送ガイドライン策定ワークショップにおいて、関係者はまず、その地域の特性を把握するため地域に既存の医療施設の位置関係を地図上に示し、理解を深めている。