初等理数科教員養成校強化プロジェクトが開始されました

2021年6月2日

プロジェクトの背景

パプアニューギニア(Papua New Guinea:PNG)の学校では、教科の知識が十分でない教員が授業をしていたり、児童が使える教科書がなかったりといった学びの課題が生じていました。このためPNG教育省は、授業の質を高め児童の学びが向上するよう、身に付けるべき教科内容・目標を明確に定めた新カリキュラムを2014年から導入しています。その新カリキュラムに沿った初めての国定教科書と指導書を作成するために「理数科教育の質の改善プロジェクト」(Project for Improving the Quality of Mathematics and Science Education:QUIS-ME)が2016年から4年間JICAの支援で実施されました。QUIS-MEでは、PNG教育省の職員と日本人専門家が一緒になって、日本の優れた教科書と指導書の特徴を活かしつつ、PNGの学習環境に適した算数と理科の国定教科書と指導書を開発しました。その国定教科書と指導書は、日本政府の支援によって、2020年から全国の小学校に配られ、授業で使われています。

一方で、将来の小学校教員を育成する教員養成校で教えられる内容は、小学校の新カリキュラムを反映したものになっていません。新しい国定教科書を教員がしっかり小学校の授業で使えるようになるために、教員養成校の学生が新カリキュラムに対応した教科内容や教授法をしっかり学ぶ事が大切です。そのために、全国の初等教員養成校で使用される学生と講師用の教材を作成し、理数科講義の質の改善を目指す「初等理数科教員養成校強化プロジェクト」が2021年1月に開始されました。(プロジェクト内容の詳細については、案件概要をご覧ください。)

プロジェクトの実施体制

PNGの教員養成校を管轄する高等教育省がメインのカウンターパート機関ですが、初等教育を管轄する教育省もカウンターパートとして、一緒にプロジェクトを実施します。日本人側は、業務主任者、副業務主任者、算数と理科の教科科専門家に、PNGはジェンダーが大きな社会課題となっているためジェンダー専門家を加えた専門家チームがPNGのカウンターパートを支援します。また、筑波大学、岡山大学、鳴門教育大学、福井教育大学の理数科教育の先生方にも日本からプロジェクトを支援して頂いています。

キックオフ会議の実施

2021年3月10日に、高等教育省、教育省、JICA本部、JICAPNG事務所、日本人専門家といったプロジェクト関係者が一堂に会するキックオフ会議をオンラインで実施しました。高等教育省ジャン・クズバ次官からの新プロジェクトを歓迎する挨拶を皮切りに、日本人専門家からプロジェクト実施計画を説明し、PNG側の関係者と計画の詳細について協議しました。また、パートナーとなる教育省ワリペ副次官からは、QUSI-MEで教科書執筆を担当し教材開発のノウハウを学んだ職員をフルタイムのカウンターパートとして業務に配置すること、カリキュラム担当職員のプロジェクトへの参加や、教育省内の会議室の使用を約束するなど、教育省からの協力についての申し出がありました。

日本では、新型コロナ感染症により緊急事態宣言が出されるなど生活にも影響が出ていますが、PNGにおいても同じくコロナ禍の影響で生活に制限が出ています。高等教育省や教育省では、職場でのマスクの着用や、10人以上の会議の禁止を指示しています。日本側の業務主任者を務めさせていただいている私は、幸いPNGに在住していますので、渡航しづらいこのような状況下でも現地で活動を主導し、他の日本人専門家のオンラインを通じた日本からの活動を支援しています。スローペースでの開始ではありますが、着実に現地カウンターパートのオーナーシップを醸成し、理数科の人材育成をしながら教員養成校の教材開発を進めています。これから4年間の活動が楽しみです。

文責:伊藤明徳(業務主任者)

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キックオフ会議のワークプラン説明の様子。高等教育省、教育省、JICA本部、JICA PNG事務所、プロジェクト専門家が遠隔参加。

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キックオフ会議の様子

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ジャン次官が議長を務めました。高等教育省メンバー(中央:ジャン次官、左:エリス副プロジェクトマネジャー、右:筆者)