地方の教員養成校でのモニタリングを実施しました！

STEPMASプロジェクトとは－暗記中心から問題解決型の授業へ

2020年9月に始まった「パプアニューギニア国初等理数科教員養成校強化プロジェクト（通称、STEPMASプロジェクト）」では、初等学校（＝日本の小学校にあたります）の先生を養成する初等教員養成校（以下、PTC）の理数科の学生向け教材と講師向け指導書を開発しています。

STEPMASプロジェクトでは、プロジェクトで開発した教材（以下、STEPMAS教材）を活用することにより、PTCの理数科講義の質を改善することに取り組んでいます。卒業生が実際の学校現場で活躍することにより、従来の暗記や教師中心型の授業が、教育省の新カリキュラムが目指す問題解決型・探究型の授業へと改善し、初等学校における児童の学びの質が改善することを目指しています。

現在は、カウンターパート機関である高等教育省や教育省の職員、PTCの理数科講師によって構成された教材開発チームに対して、プロジェクトの専門家が指導をしながら、日々、教材開発に取り組んでいます。これまで、第1学年と第2学年のドラフト教材を開発し、PTCの理数科の講義での教材活用を通して、ドラフト教材の検証を進めてきました。

嬉しい変化の兆し－地方のPTCでのモニタリングの実施

2023年4月には、PTCでの教材活用の実態や課題、今後の教材開発に向けた改善点を探るために、山岳地帯のハイランド地域と、島嶼地域にあるPTCを訪問して、モニタリングを実施したので、その様子をお届けします。

ハイランド地域のモニタリングでは、西ハイランド州、ジワカ州、チンブー州、エンガ州にある4校のPTCを訪問しました。島嶼地域のモニタリングでは、東ニューブリテン州にある3校のPTCを訪問しました。モニタリングでは、教材開発チームが中心となり、STEPMAS教材を活用した理数科の講義の観察（写真1枚目、写真2枚目）、学生による模擬授業の観察（写真3枚目）、教材活用についてのインタビューやワークショップ（写真4枚目、5枚目）を行いました。

エンガ州のPTCでは、STEPMAS教材を活用した講師による算数の講義で、講師が学生に対して「三角形の面積の求め方をどのように児童に教えたらよいか。」と、問いかける場面がありました。学生は、しばらく、近くに座っている学生同士で話し合ったあとで、「公式を暗記させるだけでは、不十分。なぜその公式で面積が求められるのか、児童が理解できることが大切である。児童が今まで学んだ知識を生かして、自分たちで三角形の面積を求められるように促して、児童のアイディアをもとに公式を作れることに気付かせたい。」と発言していました。このような学生の声を聞いた教材開発チームのメンバーとPTCの算数講師は、「STEPMAS教材を活用することで、初等学校での授業や、児童の学びを改善できる！」と、笑顔で握手をしていました。

エンガ州の事例のように、プロジェクトが想定した通り、教材が活用されているケースもあれば、STEPMAS教材を活用した講義のやり方について研修を受けておらず、教材の活用方法がわからない等の理由で、各校独自のカリキュラムを使い続けている講師も多数いることがわかりました。ワークショップでは、このような講師に対して、実際にSTEPMAS教材を見せたり、講義の一場面を実践したりしながら、STEPMAS教材の使い方や、初等学校の理数科の国定教科書とのつながり等を説明し、STEPMAS教材の活用を促進するための働きかけもすることができました。

また、プロジェクトでは女子児童が積極的に理数科授業に参加するために、PTCレベルでのジェンダー主流化の活動を進めています。講師からPTCでの実践状況について聞き取りをし、教材開発のためのヒントについて協議をしました。（写真6）

今後の教材開発に向けて

今回のモニタリングを通して、教材開発チームのメンバーは、STEPMAS教材がどのようにPTCで活用されているのか、実際に自分たちの目で見たり、講師や学生の声を聞いたりすることができました。このような経験を通して、教材開発チームのメンバーが、今まで自分たちが開発してきたSTEPMAS教材や、STEPMAS教材を活用した教員養成校での学びの改善に対して自信を持つことができたことや、今後の教材を開発に向けてモチベーションを高めることができたことも、大きな収穫の一つとなりました。

今後も、モニタリングを通して出会ったPTCの理数科講師の皆さんとのネットワークを生かしながら、教材開発チームとプロジェクト専門家が力を合わせて、よりよい教材の開発に取り組んでいきたいと思います。

文責：
アイ・シー・ネット株式会社
安川　奈々恵（算数教材作成／教員養成研修管理／啓発活動）