2019年11月8日
ARCHプロジェクト第1フェーズの成果物のひとつである「災害医療支援に関する標準手順書(SOP)」のASEAN災害対応標準手順書(SASOP(注1))への統合にむけた活動が行われています。
「昨日、インドネシア南部沖を震源とする、マグニチュード8.7の巨大地震が発生しました。さぁインドネシア政府は、どのように被災情報を収集し、それをどのような手順でASEAN各国に提供しますか?その情報は英語で提供しますか?それともインドネシア語ですか?」…机上検証会(TTX)はこのような司会者からの質問で始まりました。
災害が発生し、被災国の能力だけでは対応が困難と判断された場合に、他国への支援が要請されます。緊急医療チームの派遣が各国間で合意・決定され、被災国に入国し、医療活動が開始された場合の準備態勢、発災直後から活動が終了して帰国するまでの様々な手続きを規定したものが、ASEAN域内における災害医療チーム派遣のための「標準手順書(SOP)」です。
一方、ASEANの災害対応は、インドネシア・ジャカルタに本部をおくAHAセンター(注2)の調整のもとで行われることになっており、このASEAN全体の災害対応手順を規定したものがSASOPと呼ばれる文書です。
ARCHプロジェクト(延長フェーズ)では、SOPをSASOPに収載するための活動を支援しており、その最初のステップとしてインドネシア・ジャカルタにおいて開催されたのが、冒頭のTTXです。
このTTXには、ASEAN各国担当者、ASEAN事務局、AHAセンター、そしてARCHプロジェクトの関係者が参加しました。これまでSOPの開発を含むARCHプロジェクトの活動の多くは、主として日本の厚生労働省にあたる、各国の保健省担当者との議論を通じて実施されてきましたが、各国の保健省に加えて、災害対応の総合的な調整を担当する部局の理解を得ることは必要不可欠であることから、今回のTTXには、各国の保健省だけではなく、災害対応担当部局関係者も参加しました。
このTTXでは、まず被災国のインドネシアからの国際支援要請が、AHAセンターを通じてASEAN各国に打診され、規定の手続きに沿って、各国からの支援の申し出が確認されました。その後も司会を務めるAHAセンター担当者らから、矢継ぎ早やに出される質問に対し、各国担当者は、SOP、SASOP、そしてASEAN各国内部の行政手続きに則って、手順の説明を行ないました。
この2日間の検証作業によって指摘された様々な問題点、提案に対して、今後ARCHプロジェクトを中心とした再検証作業がおこなわれ、ASEAN内部での承認プロセスを経たのちに正式にSASOPへの統合が実現する予定になっています。
(注1)(正式名称)ASEAN地域待機制度及び共同災害救援・緊急対応活動のための標準運用手続(Standard Operation Procedure for Regional Standby Arrangements and Coordination of Joint Disaster Relief and Emergency Response Operation、SASOP)
(注2)ASEAN 防災人道支援調整センター(The ASEAN Coordinating Centre for Humanitarian Assistance on Disaster Management、AHAセンター)