災害医療の「One ASEAN One Response」の実現に向けて-第4回地域連携ドリル in インドネシア・バリ-

2019年11月25日

2019年11月25~28日にインドネシアで火山噴火を想定した第4回地域連携ドリル(Regional Coordination Drill:RCD)が開催され、ASEAN加盟10か国、ASEAN事務局等から総勢350人以上の参加者で実施されました。日本からはARCHプロジェクトの国内支援委員である災害医療の専門家に加え、国際緊急援助隊(JDR)に登録している医師、看護師が演習推進支援要員として参加しました。
RCDとは…ARCH開始時より年に1度、ASEAN加盟国の災害医療関係者が参加し、ASEAN各国の緊急医療チームの派遣を想定したシミュレーション演習を実施。これまでにタイ、ベトナム、フィリピンで実施。

今回の災害発生シナリオはインドネシア・バリ島に位置するAgung山の噴火です。Agung山は2017年に噴火して以来、断続的に噴火が続いています。RCDは4日間行われ、初日に災害医療にかかる各種手順や報告様式等を学習し、2日目に上記災害シナリオに基づく机上訓練を実施し、3日目には、Agung山麓の会場に移動し、現地実働演習が実施されました。現地実働演習の会場には、2017年に実際に災害対策本部を立ち上げられた場所が使用されました。4日目はホテル会場に戻り、災害想定演習を終了するとともに、演習の振り返りを行いました。RCDの実施内容は以下のとおり。

1日目:災害医療にかかる各種手順、報告様式等の学習

これまで、ARCHプロジェクトでは、ASEAN内の災害にASEAN各国の緊急医療チームを効果的に派遣するための標準手順書(Standard Operation Procedure:SOP)を開発しており、そのSOPについて参加者で内容を確認するとともに、そのSOPに掲載された医療記録様式等の記入トレーニングを実施しました。またASEANでは、各国が災害緊急医療チームを設置し、同チームをASEAN域内に派遣できる状況になることを目指しており、各国ごとに将来あるべき自国の緊急医療チームの能力、体制について各国ごとに検討するグループワークを実施しました。

2日目:災害想定机上訓練の開始

まず、「Agung山が20XX年11月23日午前2時に噴火、1256名の死者がすでに発生し、負傷者も4057名に上っている状況で、11月26日にASEAN各国の緊急支援チームが現地入り」という想定で、机上訓練が開始しました。次に「噴火のため、バリ本島のングラ・ライ国際空港は閉鎖され、バリ島から快速艇で1時間の距離にある隣の島のロンボク国際空港に各国チームが到着した」という想定のもと、入国手続き、緊急医療チームの登録手続きを実施しました。なおインドネシアの災害対応メカニズムや政策、WHOの災害医療基準等も学習しました。

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3日目:現地実働演習

「ロンボク島から快速艇でバリ島被災現場入り」という想定で1時間の距離にある現地実働演習の会場に到着。模擬被災者の迫真の演技と実際の救急車を使用しており演習の間は実際の被災時さながらの様相でした。各国緊急医療チームは、医療テントに次々に運び込まれる模擬負傷者に対し、迅速に医療診断と処置を行い、医療記録様式等を作成、現地医療対策本部と密に連絡をとりながら医療活動を進めました。

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4日目にRCDの振り返りを行い、各国参加者より災害医療の「One ASEAN One Response」に向けてRCDの重要性が認識されました。RCDは今後も継続して実施されていく予定であり、ミャンマーから来年の開催ホストの意思が表明されました。