シリアの幼稚園に
「遊びを通した学び」を導入。
日本の幼稚園とも交流の機会を
設けて相互理解を促進。
シリアでの赴任先は、タルトゥース県の幼稚園。私が派遣された目的は、「遊びを通した学び」の導入でした。シリアでは、「幼稚園は小学校入学までに勉強させるところ」という意識が強く、子どもたちは登園したらずっと机に座って勉強です。自ら進んで学ぶことの楽しさや大切さを伝えようと、「遊びの部屋」を企画しました。子どもたちには好評でしたが、新しいアイデアはすぐには理解されず、現場の先生の反応が冷ややかなときもありました。それでも子どもたちが工夫して遊び、自分たちで考えながら友達と関わる姿を見て、先生方も徐々にその必要性を認めてくれるようになりました。子どもたちと同じ目線で遊び、触れ合うことで、子どもたちの新しい側面を見つけることができたようです。私の帰国後も、この幼稚園で「遊びの部屋」が活用されていることがとてもうれしいです。
また、同僚の先生方は、仕事以外でも食事に招いてくれるなど家族ぐるみで付き合ってくれ、いつも温かく優しく見守ってくれるお母さんのような同僚もできました。心と心の交流を重ねることで家族のような絆が生まれ、派遣前に抱いていたシリアのイメージは大きく変わり、シリアの人たちが大好きになりました。
シリアの良さを広めるため、日本の幼稚園との交流を始め、ビデオレターや絵の交換などで、子ども同士が国を超えて楽しく交流できるよう心掛けました。そうすることで、相手の国を身近に感じ、好きになってくれればと思ったのです。シリアの園長先生にいただいた「友達—日本とシリアは手を取り合う仲間—」のメッセージには、胸がいっぱいになりました。
ところが、シリアでの内戦の勃発により、任期を2ヵ月残して日本に帰ることに。家族のように思っていた人々との突然の別れに、胸が張り裂けるようでした。
帰国後はまた保育士として働き始めましたが、JICAによるヨルダンでのシリア難民支援の活動を知り、半年間の支援活動に参加することに。行く前は「大好きだったシリアの人々の全く違った姿を見ることになるのでは?」という不安もありましたが、難民になっても変わらず温かいシリアの人たちに触れることができました。1度目の活動だけでは見えなかったシリアを知ることができ、行って良かったと思っています。