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事例紹介2016.10.10

クールな冷凍食品でマーケットを席巻!〜冷凍食品の国内市場を開拓したパイオニア〜

Golden Harvest社

地域:ダッカ

分野:食品

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品質と技術にこだわって冷凍食品市場を開拓

「冷凍食品は、工場から消費者の手元に届くまで、絶対に解凍されないように、冷凍状態で運送・保存・販売することが何より大事です。」

品質を維持する上で何が大事か、という当方の質問に対して、ゴールデン・ハーベスト社(Golden Harvest)で事業開発を担当するモハメッド・モーシン・ウディン氏が答えてくれた。同社は、バングラデシュの冷凍食品業界のトップ企業として急成長してきた。

「一度でも解凍すれば、品質が大きく劣化する」という。「品質こそが我が社のブランドなのです」と胸を張る。

日本では当たり前のような話であるが、バングラデシュで冷凍食品を販売することは並大抵のことではない。冷凍食品を保冷したまま保存・運搬するためのコールドチェーンが整備されていない。冷凍食品製造事業では、冷凍庫での保存、保冷車での運搬、小売店での冷凍ディスプレイに至るまで、一度たりとも解凍しないシステムの構築が求められる。電力が不足し、道路の整備が行き届かず、人材が育っていない中、冷凍食品を扱う物流システムを構築することは、途方もなく困難な挑戦なのである。

ゴールデン・ハーベスト社は、他社が見向きもしなかった困難に果敢に挑戦し、バングラデシュの冷凍食品市場を切り拓いたパイオニアである。品質と技術に強くこだわり、規模が小さく、国内食品メーカーが見向きしなかったバングラデシュの国内冷凍食品市場を、毎年30%近い成長を遂げる成長市場に育てた立役者である。

役員

ゴールデン・ハーベスト社の躍進

ゴールデン・ハーベスト社は、若きバングラデシュ人の起業家アーメド・ラジーブ・サムダニ(Ahmed Rajeeb Samdani)氏が、1998年に仲間と共に設立した。以来18年間で、商品取引、食品加工、物流、不動産開発、ITなど全13社にのぼる企業を傘下におく一大グループに同社を育て上げた。

2005年に設立した冷凍食品事業を扱うGolden Harvest Agro Industries Ltd.(GHAIL)は同社の中心事業のひとつであり、2013年にダッカ証券取引所に上場、バングラデシュの優良企業に成長している。

ゴールデン・ハーベスト社の面白いところは、農業や食品業界の経験を持たずに、あえて冷凍食品を選んで参入したことだ。しかし、同社の創業メンバーのひとりアジズ・ホック(Azizul Huque)氏によれば、それは手つかずの大きなチャンスであった。

「世界の食品加工がハイテク化している中、バングラデシュでは相変わらず伝統的な手作業が主体でした。労働集約的な事業で無駄が多かった。逆に言えば、成長の余地が非常に大きい分野だと考えました。最新の技術を導入して無駄を省けば、バングラデシュの冷凍食品産業を革新できると信じたのです。」と説明してくれた。

自分たちが先んじれば、他社が真似のできない大きな成果を挙げられると確信したという。

ゴールデン・ハーベスト社は、シーメンス(独)から設備を導入、バングラデシュではじめてとなるコンピュータ制御の全自動冷凍食品工場をガジプール(ダッカ市郊外)に建設した。試行錯誤を繰り返しながらも、国際水準の品質で冷凍食品を製造することに成功、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどの認証を得て、先進国への食品輸出の道を切り開いた。

工場をバックにしたトラック

バングラデシュの国内市場を開拓

Golden Harvestは順調に先進国への輸出事業を伸ばしていったが、2008年のいわゆるリーマン・ショックを受けて、欧州市場が大きく縮小したことから、売上の見通しがつかなくなった。先進国市場の開拓を目指していた同社にとって、生き残りのためには事業を大転換するしか道はなかった。

ゴールデン・ハーベスト社が選んだ戦略は、それまで輸出に向いていた目を180度転じ、バングラデシュ国内市場に目を向けることだった。それは大きな覚悟を必要とする決断であった。市場がないところに市場を作り、コールドチェーンがないところにコールドチェーンを築かなくてはならない。大きな投資とコスト負担が避けられない。

当時、バングラデシュの冷凍食品は、一部の富裕層が買う輸入製品に限られていた。スーパーの冷凍ディスプレイに置かれているのは、欧米や中東のブランドばかりで、値段も高く、一般の人の手が届くものではない。また冷凍食品を家庭で保存する冷蔵庫も輸入品が大半で、高価なものであった。人々の国内産の加工食品に対する信頼も低かった。

しかし、ゴールデン・ハーベスト社は、バングラデシュの人々のライフスタイルの変化に注目した。当時、バングラデシュ経済はアパレルの輸出産業発展により毎年6%前後で成長しており、個人所得も向上、国内産の廉価な冷蔵庫も普及しはじめ、潜在的な消費者層の厚みは増していた。

また核家族化が進行し、女性の社会進出が進んでいた。人々はより簡便な食生活を求めるようになっており、油で揚げたり、電子レンジで温めたりするだけで済む冷凍食品への需要が高まることが予測された。品質については自信があるので、あとは人々の国内産への意識を変えれば市場は成長すると考えた。

チキンナゲットを食べている家族

国内産に対する信頼感を勝ち取るため、ターゲットを中間層の上と富裕層に絞り、「安さ」ではなく、「品質」で勝負するメッセージを明確に打ち出した。また、販売場所は、スーパーマーケットを主にし、パッケージも洋風のデザインを取り入れ、現地でよく使われている原色をそのまま使うのではなく、品のある明るさを取り入れた。

ゴールデン・ハーベスト社のマーケティング戦略は、徐々にバングラデシュ国民に受け入れられ、国内産への抵抗は薄れていった。品質が良く、価格が手頃な同社の冷凍食品は、人々のニーズにマッチする格好の商品となり、売上も年々増えた。ゴールデン・ハーベスト社の成功とともに国内の冷凍食品市場は急速に拡大し、競合も続々と市場に参入、スーパーの冷凍ディスプレイからは輸入品が消え、国内産が大半を占めるようになった。

アイスクリームの製造機

今後の展開と課題

冷凍食品でブランドを確立したゴールデン・ハーベスト社は、2014年よりアイスクリーム市場にも参入。「Bloop」というブランド名で、40種類以上の商品を開発し、全国展開の販売を行っている。中間層の上から下までの幅広い層をターゲットとし、多様な嗜好や所得水準に合わせた商品ラインアップを揃えている。販促として1万台の冷凍ディスプレイを全国の小売店に設置した。

また、2016年6月には、総合的な食品メーカーを目指す第1歩として、乾燥スナックと調味料の事業にも新規進出。ポテトチップス、チリソース、ケチャップといったスナックや調味料を製造販売する新会社を設立し、「Golden Harvest」ブランドで販売を開始した。

ソースの商品

現在、同社にとっての最大の課題は、安定的なサプライチェーンの構築である。特に、生産地から農作物を安定的に調達するための「コールドチェーン」の整備が喫緊の課題となっている。バングラデシュでは、農村に低温で保存する保冷庫がなく、工場へ運搬するための保冷庫といったコールドチェーンのインフラが整備されておらず、せっかく収穫した農作物が腐って廃棄される割合が高い(30%〜40%の作物が廃棄されると言われている)。

この課題を解決すべく、Golden Harvestは、2013年より米国国際開発庁(USAID)と組み、コールドチェーンの全国ネットワークづくりに取り組んでいる。5000万ドル(約55億円)を投資して、全国にコールドチェーンを整備していく計画で、すでに1500千万ドル(約16.5億円)を投資し、3つの集荷センターと9つの保冷倉庫を建設し、30台の保冷車を購入、販促として1万台の冷凍ディスプレイを全国の小売店に設置した。

同社の日本の技術や製品への信頼は厚い。すでに日本通運とバングラデシュで合弁会社を設立している。日本企業とは、食品分野の新製品開発、食品以外の新事業開発、コールドチェーン構築面などでのコラボレーションを期待しているという。

賞の写真

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