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事例紹介2016.10.20

分かち合うことで広がる太陽光発電の新システム〜若きドイツ起業家が挑む革新〜

ME SOLshare Limited

地域:ダッカ

分野:資源・エネルギー

スマホと機器

無電化地域で電気を分かち合うというアイデア

「バングラデシュ農村の400万世帯に、小型の自家用発電システム(ソーラーホームシステム、SHS)が設置されています。この環境を有効利用して無電化地域における電力インフラの改善に貢献することが当社の目的です。」若きドイツ人セバスチャン・グルー氏はしっかりした口調で語る。2013年、グルー氏はバングラデシュで再生エネルギー関連のベンチャーME SOLshare Limited(MSL社)を立ち上げた。

CEO写真

ME SOLshare Limited CEOセバスチャン・グルー氏

ソーラーホームシステムとは、農村の無電化地域に住む世帯用に設計された小型の自家用太陽光発電システムで、屋根にソーラーパネルを取り付け、発電された電気を家のLEDランプや液晶テレビなどの電化製品に使かうものである。システムの発電容量は種類によって大きさが異なるが、平均して40W程度で、1システムが2万円〜3万円の価格で割賦販売されている。2010年あたりから急速に普及が進み、現在(2016年)までに累計400万世帯以上に設置された。

SHSのシステム

ソーラーホームシステムの構成

このソーラーホームシステムのおかげで、バングラデシュにおける電化率は大きく改善したが、「今のソーラーホームシステムは無駄が多いのです」とグルー氏は指摘する。バッテリー容量が小さいので、充電されると余分に発電された電力は無駄になる。また、家電製品の普及により各家庭の電力需要も増えているが、より大きな電力が必要な場合にはソーラーホームシステムを大容量のものに取り替えなければならない。発電された電力が無駄になっている一方で、電力が不足しているところに電気が回らない非効率さがある。

グルー氏は「ソーラーホームシステムを購入できない人々が、多数残されていることも課題」とも指摘する。ソーラーホームシステムの購入は、割賦払いになっており、大きな初期投資を必要としないが、それでも一定の水準以下の貧困層には手が届かない。

グルー氏は、各世帯が自家用に設置しているソーラーホームシステムを複数の家屋間でつなげることで、ある家屋で余剰となった電気を別の足りない家屋に流し、コミュニティ間で発電された電気を無駄なく有効利用できれば良いと考えた。余剰な電気を売り、足りない電気を買うための売買のシステムを導入することで、相互に利益のある持続的なシステムが可能となる。彼は、電気をいわば分かち合うこのシステムをSOLshareと名付けた。「太陽光(solar)」と「分かち合う(share)」をつなげた造語である。

SOLshareのシステム

SOLshareのイメージ

SOLshare事業化へ向けて

グルー氏は、マイクロファイナス機関やコンサルティング会社で働いたのち、スタンフォード大学(米)などで発展途上国における「破壊的な技術(Disruptive Technology)」の研究に従事し、自分のアイデアを事業化することを目的にバングラデシュにきた。「最初は誰も事業化できるとは信じなかった」とグルー氏は当時を振り返る。スタンフォード大学の指導教官も「アイデアは良いがビジネスにするのは難しい」と首を振ったという。

SOLshareのアイデアはシンプルであるが、これを実現するには複雑なデータ管理が必要となる。その処理システムは、個々のソーラーホームシステムの発電状況・電池の容量・電力消費量を把握し、システム間の電気のやりとりを制御、電気の売買取引を処理するなど、大量のデータを処理し、管理しなくてはならない。複雑な情報通信とデータ管理システムが必要である。こうした複雑な仕組みを実現する環境がないかぎり、グルー氏のアイデアも絵に描いた餅となる。

しかし、グルー氏はバングラデシュの変化を見て、実現可能性は十分にあると考えた。近年の通信や電気などのインフラ環境の改善は目を見張るものがある。バングラデシュには、SOLshareの事業化を可能にする前提条件が整っている。

モバイル通信の基地局

電気が通じていないところにもモバイル通信の基地局がある

バングラデシュでは、携帯電話のネットワークが全国津々浦々まで行き届いており、どんな僻地や島でも携帯電話は通じる。この通信ネットワークの環境を使い、次から次へと新しいサービスが生まれてきた。例えば、携帯電話で送金や支払いができるモバイルバンキングは、銀行口座を持たない人々でも携帯電話ひとつで遠隔地間の資金決済を可能にした。

何よりもバングラデシュには400万世帯のソーラーホームシステムが存在し、市場規模としても十分である。

SHSの累積販売台数

(出典)インフラ開発公社(IDCOL)

幸い、前職の再生可能エネルギーのコンサルビジネスを手がけるMicroEnergy社が出資してくれることになった。MicroEnergy社は、以前からバングラデシュのソーラーホームシステムに関心を持っており、グルー氏のアイデアに光るものを見た。これで事業化への一歩を踏み出すことができた。

SOLshareの開発

SOLshareは、各家屋に設置されるSOLboxと呼ばれるメーター(ハードウェア)と、メーターから得られるデータをクラウド上で情報処理する情報処理システムSOLcloud(ソフトウェア)で構成される。

SOLboxには、携帯電話の通信網を使ってデータを送信する装置が内蔵されており、各家庭での発電量、電気消費量、電池の容量などのデータはSOLcloudへリアルタイムで送信される。これによって各家庭で販売できる電気量を計算したり、購入した電気の残量を計算したりすることを自動化し、システム全体が最適化するように自動制御することが可能だ。資金決済も、モバイルアプリを使って、SOLcloud上で処理される。

ハードウェアの設計は、ドイツにいるチームのメンバーが担当する。バングラデシュではものづくりの経験が少ないので、ドイツの強みを生かす。現地での試作品づくりには3Dプリンターを使うなど、できるだけ低コストで実験ができる工夫をしたという。

SOLbox

SOLbox:ユーザに好まれる色にも細かく配慮している

一方、ソフトウェア開発はバングラデシュ人チームを主体に進める。バングラデシュのIT人材のレベルの高さにグルー氏は驚いたという。バングラデシュのIT産業は政府の後押しもあって急速に発展してきており、人材が豊富である。

開発資金については、バングラデシュ政府や国際機関が支援した。2016年2月、ドイツの国際協力公社(GIZ)の支援でバングラデシュの農村でSOLshareのパイロット事業を実施することもできた。このパイロット事業の成果が高く評価され、2016年6月、世界的に権威のあるIntersolar Award 2016においてOutstanding Solar Project賞(傑出した太陽光発電プロジェクト賞)を受賞した。

SOLshare社の今後の展開

SOLshareは、いわばプラットフォームビジネスであり、大勢の人がSOLshareに参加し、電気売買を繰り返すことでMSL社は収益を上げることができるモデルである。しかし、大規模なプラットフォームを築くには長期間を要する。この間のビジネスをつなぐのが、SOLcloudと連携したハードウェアのビジネスである。

現在手がけているのはBATsaverと名付けられた制御装置であり、ソーラーホームシステムの販売事業者向けに開発されている。

BATsaver

BATsaver:2016年7月から販売開始

BATsaverは、ソーラーホームシステムの稼働・停止を遠隔で操作できるシステムである。月賦の延滞時には電気の使用を自動的に停止し、支払いがあれば使用を再開する操作が可能となる。今までは、延滞してもユーザはシステム利用を継続でき、販売事業者側に対抗手段がなかった。BATsaverは、延滞先からの資金回収に頭を悩ませていた販売事業社のニーズに応えるもので、2016年7月から発売を開始、ソーラーホームシステム最大手のグラミン・シャクティが取り扱うことがすでに決定している。

新しいアイデアはどんどん出てくるという。しかし、着実にビジネスを固めながら、研究開発を進める方針だ。そのためには、さまざまなステークホルダーと協力していくことを考えている。

日本企業や大学とのコラボレーションにも前向きである。新しいハードウェアの研究開発、SOLcloudを活用した新しいビジネスの試行、電気自動車/三輪車との連携による新しいサービスなどに関心があるとのこと。日・独・バの3国共同で生み出す新しいイノベーションにも期待したい。

SOLshareスタッフの写真

SOLshareのスタッフたち

ME SOLshare Limitedに関する詳細レポート

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