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事例紹介2015.02.12

デジタル化を進める騎手達 第2回

Devnet Limited/A.K. Sabbir Mahbubさん さん

地域:ダッカ

テーマ:その他

団体の種類:民間企業

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Devnetの誕生

サラリーマンの家庭に育ったサビールは、得意なITの分野で自立したいと周囲の反対を押し切って仲間とベンチャーを立ち上げた。一番強く反対したのは両親であったが、一番強く支えてくれたのも両親であった。母は退職金15万円の全てを息子に渡し、1997年にサビールは起業する。

最初は様々な業務用のアプリケーションの開発を請け負う開発会社としてスタートしたが、収入は安定しなかった。創業して7年後の2004年にサビールは一つの決断をする。あれこれ手掛けるのではなく一つの分野に特化しよう。そして自社独自の商品を持とう。他人のソフトウェアを開発するだけでは収入は不安定であり、自分たちの力も育たない。自らコントロールできるプロダクツがあれば、それを軸に事業を構築し、安定的な収入を稼ぐ道も開ける。

今までの経験から、文書を電子化して保存する「アーカイブ」の技術に関しては、他社より秀でていることを知っていた。バングラデシュの経済が発展するに従い、多くの文書が処理されることになる。この文書管理システムの分野は大きく発展するに違いない。こう考えたサビールは自分の直感を信じて独自のアーカイブ・システムの構築に特化することを決めた。

しかし、これは大きな賭けである。当時は実際にそのようなニーズや市場が充分にあった訳ではない。市場が育つまでの間に、資金が底をついて倒産する可能性だって小さくない。パイオニアというのは格好が良いが、危険があるから他の人は手掛けないのだ。やがて、サビールはそのことを苦い体験を通じて知ることになるが、新しいビジネスを開拓することに自ずと闘志が湧いてくる。それはバングラデシュのハシナ首相が「デジタル・バングラデシュ」を宣言する5年前のことである。

アナログからデジタルへ

銀行口座の開設書類、携帯電話の申込書、出生届や税金の納付書など、私達の生活では実に多くの書類が紙へ手書きでなされている。しかし、こうしたアナログのデータは、そのままではコンピュータは処理できない。アナログをデジタル化するプロセスが必要となるのだ。

申込書に手書きで記入する項目ー例えば申請者の誕生日ーをコンピュータに処理してもらうには二通りの方法がある。一つは人間が読み取ってパソコンに打ち込む方法である。これは正確であるが時間と掛かるコストが大きい。もう一つは文書をスキャナーで読み取り、手書きの文字を認識するためのソフトウェアでパソコンにデータを取り込む方法だ。これは手間が省けて楽であるが、認識された結果に間違いが多い。

Devnetは、この二つの方法の欠点を補い、長所を活かすことで処理作業を安いコストで、早く正確に行うことができないかと考えた。そこで生まれたのが、入力作業をいくつかの段階に分けて行う発想だ。まず最初の段階では文字認識ソフトウェアを使って大量の書類を早く処理し、その認識の結果を人間の目で確認するというものである。人間はソフトウエアの間違ったところだけを修正すれば良いので手間が省ける。このシステムの実現に向けて、Devnetは時間と資金を集中した。

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思った通りのシステムは出来上がったが、いかにも時代が早かった。一生懸命にシステムを売り込んだが、まだ文書を電子管理する必要性を感じている企業は少なく、新しいシステムなので評価にも時間がかかり、最初の顧客を得るのに8ヶ月を要した。そんな中、政府が新たに出した一つの通達がDevnetを救った。

2006年、政府は急増する携帯電話の利用者保護のため、携帯電話各社に「契約者の個人情報はいつでも提示できるように」という命令を出した。いかにも単純な命令であるが、当時でも数千万人単位の契約者数を持っていた大手の携帯電話会社にとって、この命令は顧客管理システムの抜本的な見直しを意味した。このソリューションとしてDevnetのシステムが、携帯電話の通信大手Banglalinkに採用されることになった。

Devnetの躍進

Banglalinkとの事業を契機に少しずつ業務が広がる。他の携帯電話通信会社の分も含め、今まで4000万件の携帯電話の申込書を処理した。3000万枚に及ぶ保健に関するアンケート結果を10ヶ月間で全てデジタル化するような案件も手掛けて高く評価された。国立図書館や軍の機密文書、更には土地の登記簿など高度の繊細さと機密性が必要な仕事も舞い込むようになり、今や110名の正規スタッフと250名の契約スタッフを抱える中堅企業に育っている。

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サビールは次の展開をこう語る。

今後は、自社の強みである文書管理システムを更に拡充し、手書きだけではなく、あらゆる入力ソースに対応した文書管理のプラットフォームをオンラインのクラウド・サービスとして提供できるビジネスモデルを構築したいと考えています。また新たな成長分野として、銀行などの金融関係の文書管理に注目しています。携帯電話を活用したモバイル・ファイナンス・サービスが大きく普及しており、そのインフラを利用したEコマースやモバイル・ファイナンス・サービスと通常の銀行の預金や借り入れのサービスとの連携がこれから必要となってくるので、自社の強みを生かして新たな事業にすべく、既に複数の銀行と仕事を進めています。

次の目標は国際展開だ。日本企業とのビジネスは今のところ無いが、是非機会があれば挑戦したいという。

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