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事例紹介2015.02.12

デジタル化を進める騎手達 第1回

Devnet Limited/A.K. Sabbir Mahbub さん

地域:ダッカ

テーマ:その他

団体の種類:民間企業

A.K. Sabbir Mahbub

国家プロジェクト「デジタル・バングラデシュ」

現代に生きる私達日本人の生活は、全てと言ってよいほどに「デジタル」に囲まれている。私達は当たり前のように、スマホで人とつながり、情報を入手し、また発信している。ワンクリックで欲しい商品が自宅に届くし、住民票なども市役所へ行くこともなく住基カードひとつで自動交付されるーあまりに当たり前なので、今の若い人には「デジタル化の推進」という言葉を頭で理解できても、感覚的には少し分かりにくいかもしれない。

しかし、一昔前の時代を生きた世代ー書類が手書きかタイプで作成され、外での通信と言えば公衆電話しかなかった世代にとっては、「デジタル化」がもたらした生活の大きな変貌は自らの体験として思い出すことができるであろう。

10年ほど前のバングラデシュでも、あらゆる行政上の書類、例えば出生届や土地の謄本などは紙の印刷であった。それら重要書類は上から上へと積み上げられ、保管倉庫の埃とカビにまみれて、いつ行方不明になってもおかしくない状態に放置されていた。また1億人を超える人口に対して1百万回線の固定電話しかなく、電話での通信は不便であった。インターネットも衛星通信を使う他ないので料金が異常に高く、一般の人にはとても手が届かない夢のサービスであった。

そういった中、世界的なデジタル化の余波が、本格的にバングラデシュに届いたのは今世紀に入ってからである。それは携帯電話の普及から始まり、今の急速なインターネット利用者の広がりへと繋がっていった。あらゆる分野でデジタル化が進み、政府の「デジタル・バングラデシュ」政策によって変化のスピードが加速し、対象となる分野も拡大した。

バングラデシュの携帯電話契約者数の推移

デジタル化の波は、行政の公共サービスからビジネス、更には個人の消費生活まで人々のあらゆる生活面に大きな変化をもたらした。今や第三世代の通信サービスは農村の津々浦々まで行き渡り、携帯電話やインターネットは珍しいものではなくなっている。諸届けや証明書類は電子化され、デジタル化されたデータにより、市町村での公共サービスの効率も大幅に改善しつつある。

本シリーズでは、バングラデシュのデジタル化に様々な形で関わっている人々を取り上げる。政府でデジタル化を推進している人々から草の根でデジタル化の恩恵を広めている起業家まで「デジタル・バングラデシュ」という国家プロジェクトにそれぞれの立場で取り組むチェンジメーカーを「デジタル化の騎手」として伝えて行きたい。

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デジタル化を陰で支える:Devnet Limited

最初にご紹介するのは、文書管理システム、特に紙ベースの文書を電子化して管理するためのシステム開発とサービス提供でトップを走るDevnet社である。

文書管理システムというといかにも難しい響きがある。

確かにシステムの中身は複雑な計算と論理で出来上がっているが、要は作成した文書を整理して、あとで使いやすくするものである。今まで事務員が手作業で紙に穴を空け、一枚一枚ファイルに閉じていた文章の整理作業を、コンピュータの力を借りて大量且つ短時間に行い、保存した資料を探したり、利用したりすることを簡単にする仕組みである。

一見、味もそっけもないシステムであるが、このシステムこそがバングラデシュのデジタル化を推進する陰の主役の一人なのだ。

例えばバングラデシュの携帯電話が普及したのは、高度の無線技術と機材が持ち込まれ、端末の価格が低下したことが大きいが、このサービスを実際に成り立たせるためには、大量の通信契約を処理し、契約者の情報を正確に管理し、毎月の使用量を課金し、徴収するための仕組みが必要となる。1千や2千程度の数であれば手作業で十分だが、数百万、数千万の契約者数になると手作業では全く機能しない。手書きで書かれた申込書をどのように管理し、課金やアフターサービスにつなげるか、その課題に取り組んだのがDevnetの文書管理システムである。

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課題さえ明確になれば、ソリューションは自ずと見えてくるーそう語るのは創業者のA.K. Sabbir Mahbub会長だ。しかし、ある特定の「課題」をきちんと定義し把握することは、それだけでも大変なことだ。目の前の課題を分析し、あるべき姿を描き、そのための要件を洗い出すことで、実現を阻む問題点が特定される。サビール氏はバングラデシュがデジタル化するための課題を洗い出し、そのソリューションに向けて道を切り拓いてきた。それはバングラデシュのデジタル化の歩みに他ならない。

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