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産業レポート2015.02.12

モバイル・ファイナンスの台頭 第1回

地域:全国

テーマ:その他

カテゴリ:注目分野

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ここ数年のバングラデシュの大きな変化の内、横綱級とも言える地殻変動を起こしているのは、急速に発展するモバイル・ファイナンス・サービスであろう。バングラデシュ中央銀行が毎月発行しているモバイル・ファイナンス・サービスの月次報告(2014年12月実績)によれば、現在28の銀行がモバイル・ファイナンス・サービスを実施しており、54万件の代理店を通じて2500万人に対してサービスを提供している。

日々の平均取扱件数は250万件で、平均取扱額は35億タカ(約48億円)に上る(いずれも上記と同じ2014年12月実績)。この取扱額は、モバイル・ファイナンス・サービスを行っている国々の中で最も大きい規模である。

モバイル・ファイナンス・サービスとは何か

モバイル・ファイナンス・サービス(MFS)は一般の銀行のような支店網やATMといったインフラを必要とせず、顧客のもつ携帯電話とその通信ネットワークを利用し、代理店を通して預金の引き出し、送金などの金融サービスを提供するサービスである。顧客はMFSの代理店となっている小売店(携帯電話店や食料品店等の小売店)においてMFS口座を開設し、資金の預け入れを行うことにより、各地の代理店から現金の引き出し、携帯電話のSMSを使った送金などのサービスを利用できる。

モバイルファイナンス送金の仕組み

MFSにより、人々は正式な銀行口座を持たなくとも、携帯電話の番号と暗証番号さえあれば、全国のありとあらゆる所に展開しているMFSの代理店から資金を引き出したり、送金したりすることができるようになった。今まで金融サービスから切り離されていた農村の人々にとって、これは実に画期的なことであった。

モバイル・ファイナンス・サービスのインパクト

写真:携帯で引き出し口座の確認(左)、引き出し金額の確認(右)

写真:携帯で引き出し口座の確認(左)、引き出し金額の確認(右)

このインパクトは、日本人には少しイメージがしにくいかもしれない。日本では、様々な金融サービスが行き届いており、あまり不自由を感じることはないからだ。銀行や証券会社をはじめ、信用組合や信用金庫の他、郵便局が全国津々浦々までカバーしていて、ATM網も充実している。コンビニのATMでも現金の引き出しや振り込みができ、インターネットバンキングの普及により、いつでもどこでも資金決済ができるようになっている。

しかし、バングラデシュでは事情が違う。まず農村部に銀行の支店やATMはなく、営業員もこない。預金口座を持たない農村の人々や都市部の貧民は、日々の収入で受け取った現金を自分で肌身離さず持っているか、自宅のどこかに隠すしか無い。スリや泥棒などに取られるリスクが高い上、預金して金利を稼ぐこともできない。

都市に住む子供への仕送りをしようにも、遠くにある銀行の支店まで出向くか、NGOなどが運営するマイクロファイナンス機関を使うしかないが、どちらも手間と時間がかかる。こうした人々にとって、携帯電話一つで振込も現金引き出しもできるMFSは大きな生活改善をもたらした。

バングラデシュでの急成長

2011年にバングラデシュに導入されたMFSは、瞬く間にバングラデシュ全土に広まる。その先駆けとなったbKashはBRAC Bankのモバイル・ファイナンス・サービスであるが、2011年のサービス開始以来、2014年1月現在では代理店数が8万店、契約者数1100万人となった。bKash を追いかけるように他の銀行も同様のサービスを開始し、毎月の取扱額もうなぎ上りに増えてきている。

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このようなMFSの普及は、バングラデシュの伝統的なビジネスのあり方を根底から変えて行く。その一つが、Eコマースの発展であり、将来的には電子マネーの普及にも繋がって行くであろう。

次回は、MFSの利用状況や新しいビジネスモデルの出現についてお伝えする。

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